アバルト初の量産GT「フィアット・アバルト750GTザガート」が出走 ラ フェスタ ミッレミリア2018

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明治神宮を拠点に1400kmを走行

ミッレミリア(Mille Miglia=イタリア語で1000マイル)とは、その名のとおりイタリア全土を1000マイル(約1600km)にわたって走る伝説の公道レース。1927年から第二次世界大戦による中断を挟んで57年まで開催されたが、諸事情により中止。それから20年を経た1977年に、かつて出走したマシンの同型車でスピードではなく、設定タイムに対していかに正確に走れるかを競うクラシックカーラリーとして復活した。

その復活版ミッレミリアの日本版が、1997年に始まった国内最高峰のクラシックカーラリーであるラ フェスタ ミッレミリア。22回目となる今回は全112台が参加し、10月12日に東京原宿・明治神宮をスタート。4日間で1都9県にまたがる約1400kmを走破した。

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スタート前に安全を祈願し、100台以上の参加車両が明治神宮を後にした。

今回エントリーしたアバルトは2台、1957年と58年のフィアット・アバルト750GTザガート。エンジンを747ccにスープアップしたフィアット600のシャシーに、ダブルバブルが特徴的なザガート製のアルミボディを架装したアバルト初の量産GTだ。愛らしい姿ながら、ミッレミリアではデビュー間もない56年にGT750クラスで2位、ラストイヤーとなった57年には同クラスの1〜12位を独占という実績を残している。

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「目指すは本家ミッレミリア」奥山清行さん

真っ赤な1957年式のオーナーは、これで3年連続3回目の出場となるKen Okuyamaこと奥山清行さん。GM、ポルシェ、ピニンファリーナで活躍した後、2006年に独立。帰国後はクルマはもちろん、鉄道車両や農機から家具や日用品まで幅広い分野を手がけるデザイナーである。
「個人的には、昔から小さなクルマが大好きなんです。今もこのアバルトのほかにフィアット500Lとクラシック・ミニ、そしてオースチン・ヒーレー・スプライトMk1を持っているんですよ」

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1957年式の750GTザガートで出場された奥山さん。

750GTザガートはエンスージアストとして、そしてデザイナーとしても好きなクルマだそうで、5年ほど前に入手した。前オーナーはかつてランチアのワークスラリーチームを率いたクラウディオ・マリオー二氏で、トリノでレストアされたという由緒正しい個体。ラ フェスタ ミッレミリアをはじめとするイベントに参加しては不具合を洗い出してきたそうで、現在はすこぶる快調という。
「エンジンが小さいから高速道路は苦手だけど、山道、とくに下りは最高に楽しい。1000km以上走っても疲れないし、すごく気に入ってます。おそらく一生モノですね」
来年か再来年には、20数年来の夢だった本家イタリアのミッレミリアに、この750GTザガートで出場する予定だそうだ。

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ダブルダブルが特徴的な750GTザガートのリアビュー。

「五感に伝わってくるエンジンの息づかいを堪能」高瀨陽一郎さん

当時のアバルト純正色というきれいなライトブルーに塗られ、希少なオリジナルの前後バンパーやアマドーリのアロイホイールを備えた1958年式のオーナーは高瀨陽一郎さん。今回で9回目、うちアバルトでは7回目の出場になるというエキスパートだ。

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1958年式の750GTザガートで参加された高瀨さん(右)とコドライバーの成松さん。

「大きなクルマも魅力的ですが、気持ち良さを感じるところまでエンジンを回すと、けっこうなスピードが出てしまいますよね。その点、これは一般道の制限速度内、40〜50km/hでもエンジンの息づかいや音が五感に伝わってきます。だから道さえ空いていれば、都内でもドライビングが楽しめるんですよ。これはほかのクルマでは味わえません」

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エンジンルームもピカピカ。配線もオリジナルを再現している。

これまで大小さまざまなトラブルを経験したが、おかげで今ではエンジン音を聞けばコンディション、たとえば水温が上がり気味といったことが判断できるそうだ。
「構造がシンプルだから、素人でもある程度はトラブルにも対応できますしね」
そう語る高瀨さんにとって、750GTザガートを維持する上で唯一の悩みは、パーツの価格がどんどん高騰していることだという。

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2台の750GTは1400kmを走り切り、ゴールを決めた。

ちなみに今回のレースでは、750GTザガートは2台そろって無事にゴール。完走78台中高瀨さんは38位、奥山さんは64位だったが、GT750クラスが設定されていればワンツーフィニッシュを果たしたことになる。

文 沼田亨

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