ABARTHとFIATの違い②【スペック】

150827_YK_00038

一見似ているようで、それぞれの魅力が満載のABARTHとFIAT。その違いをご紹介する企画第2弾では「スペックの違い」を、チェックしていきたいと思います。ボディサイズ、エンジンのパワー、数値の差はどれくらいあるのでしょうか?もちろん実際はカタログスペックによる数値の差だけでは比較できないところがあるのは重々承知ですが、数字だけではわからないサソリの刺激を体感する前に、目で見てわかるところをチェックしてから「あ~なるほど!」と、理解するのもわかりやすいと思うんですよね。というわけで、まずはスペックをチェックしてみましょう。

ボディサイズ:スペック的にはほぼ同じ

150827_YK_00022

まずボディサイズから見ていきましょう。FIATは全長3545×全幅1625×全高1515(mm)。ABARTHは全長3655×全幅1625×全高1515(mm)。「ABARTHの方が全長が110mm長い」という違いだけなんですよね。これはバンパー周りのエアロパーツの形状によるものなので、運動性能にはさしたる影響はなさそう。他のスペックを見てみても、ホイールベースはもちろん同じ。多少は違うかな?と思いつつ確認した前後トレッドも、フロント1415mm、リア1410mmとまったく同じ。なので、気になるラゲッジスペースも、まったく同じ容量でした。

1※ラッゲージ部分(左:ABARTH/右:FIAT)

ちょっと差があるのは車両重量。FIATはいちばん軽い500 1.2 Popで990kg、いちばん重い『FIAT 500 TwinAir Lounge(チンクエチェント ポップ ラウンジ)』で1040kg(ただし『500C TwinAir Loungeは1050kg』)。それに対し、『ABARTH 500』は1110kg。これはエンジンの重量差が大きいのではないかと予想されます・・・。が、実は他にも重くなった分、軽くするなどの調整が行われているので、一概にエンジンだけとは言えないんですよね。

2※左:ABARTH/右:FIAT

例えばタイヤ。FIATは175/65R14というサイズのタイヤがスチールホイールに履かされていますが、ABARTHは195/45R16というサイズのタイヤがアロイホイールに履かされています。よく言うバネ下重量などは、スチールホイールからアロイホイールにすることによって軽くなったりしますが、実はこの両者にはさらにタイヤ関係で違うところがあるのです。それはスペアタイヤ。『FIAT 500』はエマージェンシー用のテンパータイヤが搭載されていますが、『ABARTH 500』はリペアキットに置き換えられて、テンパータイヤは搭載されていないんですね。テンパータイヤはかなり重量があるので、エンジン重量が増した分を軽量なリペアキットに置き換えることで、重量増を抑えているというわけなんです。

3※ルーフ部分(左:ABARTH/右:FIAT)

また、クルマというものは、軽ければ軽い方が運動性能は高くなると言われますが、どこを軽くするかでクルマのバランス、重心高はかなり違ってきます。例えば、ルーフなどの高い位置に重いものを乗せると重心高が上がってしまい、極端に言うと頭周りがグラグラ振られて、ドッシリ感がなくなってしまいますが、逆にバネ下と言われる足回りの部分を軽くすると、例えば機能性の高い軽量なスニーカーに履き替えたかのごとく、軽快に動いてくれるようになったりするわけなんですね。

特に今回の比較では、エンジンスペックがまったく違うので、重量差だけで比較するのはナンセンス。それよりも、スポーツモデルになったら、急に幅が広くなったとか、前が見えにくくなったなどという、形状による極端な変化がないので、これまで通り扱いやすいスポーツモデルだと考えた方がいいでしょう。

エンジン:ABARTHだけの特別なスペック

さて、そのいちばん大きな違いエンジンスペックを見ていきたいと思います。『FIAT 500』が日本にやってきた当初は1.4Lエンジンもラインアップに存在したのですが、現在は直列4気筒1.2L(1240CC)エンジンと直列2気筒(875CC)ターボのツインエアエンジンの2種類に集約されています。それに対して『ABARTH 500』は直列4気筒1.4L(1368CC)ツインタークーラー付ターボエンジンのみのラインアップですから、もうエンジンのベースからして違うわけです。つまり、比較的お手軽なコンピューターのロムチューンのみで、パワースペックだけ変えていますというスポーツタイプではないということなんですよね。

4※エンジン部分(左:ABARTH/右:FIAT)

ではパワースペック的に高い方、ツインエアエンジンと比較してみてみましょう。
FIATが最高出力63kW(85ps)/5500rpm、最大トルク145Nm(14.8kgm)/1900rpm。
ABARTHが最高出力99kW(135ps)/5500rpm、最大トルク180Nm(18.4kgm)/4500rpm。

実はABARTHはMTとATモード付き 5速シーケンシャル トランスミッションでは最高出力が違いまして、今回試乗したATモード付き 5速シーケンシャル トランスミッションは、最高出力103kW(140ps)/5500rpmと、少しパワーが大きくなります。ちなみに最大トルクは同じです。エンジンから発生する力を伝えるトランスミッションの機構の違いでこうなるのでしょうが、実際乗っているとさほど違いは感じないと言っていいでしょう。

そしてこの数値の違いを見ると一目瞭然、パワースペックが全然違うのがわかりますよね。特に最大トルクの出方などを見ると、高回転域で力を発揮するABARTHは、スポーツモデルとして磨かれているということが、おわかりいただけるかと思います。

機能面:スイッチポンでさらなるパワーアップ!

150827_YK_00301

ABARTHには、スポーティな魅力をさらに引き出すための魔法のスイッチが装着されています。名付けて「SPORTS」スイッチ。わかりやすくそのまんまでしたね・・・(笑)。

そのスイッチを押しますと、最大トルクが206Nm(21.0kgm)/3000rpmにパワーアップ。トルク数値が大きくなるのもそうですが、最大トルクを発揮するエンジン回転数がグッと低くなるのが、これまたポイントのひとつなんです。より低回転域で力を発揮してくれるので、例えばワインディングロードを走るなんていうときに、グイグイ上る力強さ等々、威力を発揮してくれるんですよね。もちろん街中や高速道路でも、追い越し加速が必要なんていうシーンでも、よりラクにレスポンスよく、思い通りに動いてくれるという感覚がアップするハズです。

150827_YK_00162

対するFIATには、燃費を向上させるECOスイッチが設けられています。最高出力57kW(77ps)/
5500rpm、最大トルク100Nm(10.2kgm)/2000rpmにパワーが抑えられるので、特別なテクニックを持っていなくても、スイッチひとつでエコドライブできちゃうのがいいところ。おかげでなんと燃費数値はJC08モードで24.0km/l。直列1.2Lエンジンの方でも19.4km/lとなかなかの数値!

150827_YK_00171

ちなみにABARTHはMTで14.9km/l。ATモード付き 5速シーケンシャル トランスミッションで13.8km/lと、さすがに『FIAT 500』にはかないませんが、このパワースペックで考えるとなかなかの数値と言ってよいと思います。

さて次回は、パフォーマンス面をチェック!実際乗ってみたらどんな風に違いがあるのか。カタログを見ただけではわかなない、フィーリングの部分をチェックしていきたいと思います~。


vol3

INFORMATION

★『ABARTH 695 Biposto 』の詳細はこちらから
>> https://www.abarth.jp/695biposto/

嶋田智之さんによる『ABARTH 695 Biposto』レポートはこちらから
>> https://www.abarth.jp/scorpion/driving_fun_school/4862

★Ready for Autumn キャンペーン
専門のスタッフがABARTHの熱いカーライフをサポート。10月31日(土)まで実施中!
>> https://www.abarth.jp/readyforautumn/

★<ABARTH SAFETY DRIVING CAMP>
ADAの要素を取り入れながら、英国発祥のミニ・ジムカーナ『オートテスト』の本格的な導入を目指して、新プログラムがスタート。
>> https://www.abarth.jp/safetydrivingcamp/

Text:竹岡圭
Photos:YosukeKAMIYAMA