1/1の最高のおもちゃ アバルトライフFile.40 赤羽さんと595 Competizione Performance Package 3

乗るたびに非日常を味わえる

「周りにクルマの話で盛り上がれるような友達がほとんどいない世代なんですが、私は子どもの頃からクルマが好きでした。なぜかと聞かれても“好きだから好き”としか言いようがないんですけど、特にスポーツカーとか“箱”のレーシングカーが好きで、クルマの絵を描くときにはタイヤとホイールアーチの隙間を近づけて描くような子どもでした(笑)。今から思えば、その頃からクルマを単なる移動手段ではない特別なものと捉えていたのかもしれませんね」

アバルトカレンダー2021の9月に登場してくださっている赤羽 亮さんは、595 Competizione Performance Package 3を選んだ理由を、このように話してくれました。


595 Competizione Performance Package 3を所有されている赤羽さん。

車歴を訊ねてみると、アバルト以前の5台のクルマのうち2台がイタリア車、他の3台も欧州車、そしてそのほとんどが3ドアハッチバックのマニュアルトランスミッション。いずれも非日常感の強いクルマばかりで、生活感のようなものは希薄です。

「イタリア車が多いのは、クルマに華を求めるからなんだと思います。見ても乗っても、その瞬間にパッと花が開いた感じがする。絶対的な性能もさることながら、常に気持ちを快く刺激してくれますよね。私は3ドアハッチバックが好きなんですけど、それはクルマには日常の中の非日常であって欲しいと思っていて、生活感の強いクルマは避けたいからなんです。だから、クルマの中にティッシュボックスは置きません(笑)。それに単なる移動手段ではないと思っているので、操縦している感覚が強くてそれ自体を楽しめるMTが好きなんですよ。そういったところを求めてアバルトに行き着いたようなところがあるのかもしれませんね。このクルマは、ある意味では日常の中の非日常の典型ですから」


赤羽さんはアバルトのことを30年以上前からご存じだったようで、日本にブランドが導入された後も、すぐにショールームまで見に行かれたそうです。

まさにおっしゃるとおり。3ドアハッチバックの中でもとりわけ生活感が希薄なのがアバルト595シリーズですし、たっぷりと非日常感が味わえるのも595シリーズの大きな特徴です。

「シートも硬いし足回りもハードだし、サウンドも弾けるような感じでしょ。クルマのエネルギッシュな性格に負けちゃうから体調が悪いときにはあんまり乗りたくないけど、元気なときに乗るとこんなに楽しいクルマはない。乗るたびにワクワクする。他にそういうクルマ、思い浮かばないんですよね。それに、これだけ速ければ十分だと思います」


クルマに非日常を求めるという赤羽さん。運転感覚が強く味わえるMT仕様を好み、しかも左ハンドル仕様を選択。

ましてや赤羽さんの595 Competizione Performance Package 3は、それこそ走りの面では頂点にある595 Competizioneがベースの限定車ですから、なおさらでしょう。

「確かにブレンボは魅力的でした。正直、真髄を引き出すような走り方は全然しないんですけど、ブレンボ好きなんです。ごく普通のクルマに備わるようなブレーキじゃないですし、もしかしたら単なるミーハーなのかもしれません(笑)。それにLSDがなかったとしても、Performance Package 3に惹かれたと思います。595には、まだ500だった頃から、心のどこかで欲しいと思っていたところはあったんですけど、このクルマはボディカラー、ホイールのデザイン、挿し色の白とすべてが好みにピッタリだったんです。Uconnectが備わったのも大きかったですね。私は後付けとかモディファイとかをせずに、ツルシのまま乗りたいので」

ゆっくり走るだけでもワクワクする

ところがその595 Competizione Performance Package 3が発表された2019年は、赤羽さんにとって結婚直前というタイミング。考えたらいけないとはわかっていても、心の中にふと湧き出してくる結婚式を挙げるかアバルトを買うかという葛藤……。

「実は、そこで妻が後押ししてくれたんです。その頃はクルマを手放していて、必要なときにレンタカーを借りてドライブしていたんですけど、“結婚したら必要になるかもしれないでしょ”って。595を手に入れてからしばらくはふたりでドライブしたり旅行に行ったりもして、そんなときに“やっぱりクルマがあってよかったね。それにこのクルマかわいいね”って、一緒に楽しんでくれてます。私が妻の立場だったら、そんなふうにはできなかったでしょうね。本当に、ただただ感謝です。もちろん挙式を諦めたわけじゃなくて、式を挙げようと計画していたら、コロナ騒ぎになってしまって……」


595 Competizione Performance Package 3の特徴のひとつが、専用のマットグレー「Grigio Opaco」のボディカラー。赤羽さんは「基本的にモノトーンの車が好きで、マットは手入れが大変そうだけど純粋にかっこいいと思った」と選択の理由を話してくれました。

そのうえ赤羽さん夫妻、今年の3月にお子さんが産まれました。なので以前は夫婦で遠出したり赤羽さんひとりで夜にちょっと流しに行ったりしていたそうですが、今はお子さんが小さいこともあって、アバルトに乗るのは週に1回、家族で近場に出掛ける程度なのだとか。せっかくなので、小さなお子さんのいるファミリーにとって595の使い勝手はどうなのか、訊ねてみました。

「ものすごく使い勝手がいいとはいえませんけど、工夫次第では無理なく使えますよ。ベビーカーもコンパクトにたためるものを実際にアバルトに載せてみて選んで買いましたし、チャイルドシートもリアシートの片側を倒してリアハッチから載せられます。そういうことをとにかく楽にこなしたい人にはあまりオススメはしませんが、私自身はそれほど問題には感じていません。子どもを乗せるときには普段以上にゆっくりていねいに走ることを心掛けるけど、そんなときでもこのクルマは気持ちをワクワクさせてくれる。それに、こういう“使い切ってる”感も、好きなんです。大きいカバンを持って少ししかモノを入れないみたいな、そういう無駄がない。どうしても大人数や大荷物を載せなきゃならないときには、レンタカーを借りればことたりるわけですしね」


チャイルドシートはリアシートに装着。積み込むときに少し手間はかかるものの、ISOFIXなので装着は簡単とのこと。レコードモンツァのサウンドでお子さんも上機嫌だそうです。

アバルトカレンダーの撮影のとき、赤羽さんはメーカーの設計部からご自身の希望で商品企画部へ転籍し、まったく違う分野で仕事をスタートして数ヶ月、といった状況でした。会社として生産する商品が転換期を迎えていて、先々の社会の動向に注意を払いながらリンクさせていく商品の企画が求められ、そこにしっかりと貢献していこうというのが自分自身の大きなチャレンジ、とおっしゃっていました。

「それは今も変わっていません。今の部署では新人も同然でインプットが多く、いいアウトプットに繋げることがまだできていませんが、そこは変わらず私にとっての挑戦で、真剣に取り組んでいます。でももうひとつ、挑戦……というより、真剣に向き合ってることがあるんです。子育て、なんです。親だから当然なことではあるんですけど、私にとっては仕事以上に未知な世界ですし、人を育てるのってものすごく大変なことだと思うんですよ。そもそも自分自身、若い頃には結婚して子どもを持つことを想像できなかったほどなんですが、縁あって素晴らしい妻と巡り会えて子どもにも恵まれて……。自分の子どもが生まれてみたら、これ以上かわいいものはないな、って感じたんです。今、幸いなことにというか何というか、仕事のほとんどがテレワークなので、育児も家事も妻ひとりに任せるのではなく、自分も一緒になって関わっていける。それは私にとってはラッキーだなと思います。挑戦というにはものすごく楽しくて満足感の高い挑戦ですね。でも、子どもを寝かしつけるときに妻だとすんなり寝てくれるのに私だと寝てくれないとか、ちょっとメゲたりすることもありますけどね(笑)」


アバルトの運転感覚については「路面の凹凸をしっかり伝えてくるので、高速道路を走る時は、今までよりも丁寧に慎重に運転するようになりました。だから自然と安全運転にもなりますね」とコメント。

今でもワクワク

おそらくご自身で思っているより遙かに子煩悩なパパの顔をされてると思いますが、お子さんが大きくなったらアバルト595では手狭になって、乗り続けることができなくなったりすることが……。

「もしかしたらそう考える時が来るのかもしれませんね。当初は10年乗るつもりで買いましたし気持ちとしては乗り続けたいですけど、それはもっと先になってから考えます。と言いながら、本当に大きなクルマが必要なときにはレンタカーを借りている自分がいるような気もしてます(笑)」

最後に、お決まりの質問です。赤羽さんにとってアバルトはどんな存在ですか?

「幼い頃に新しいトミカを買ってもらったり、もうちょっと大きくなったらラジコンで、高校生になったらバイク。そういうひとつひとつに喜びがあって、そのワクワク感とかドキドキ感とかが、このクルマが手元に来たときに全部、一気に蘇ってきました。子どもの頃って、いちばん大切なおもちゃが目の前にあるとご機嫌でしたよね。アバルトは私にとって、きっとその集大成のような存在なんだと思います。1/1の大好きなおもちゃ。だから車庫にこのクルマが眠っていることを考えると、毎日嬉しい。機械式のパーキングなので、扉が開いたときにはいつもときめきます。こんなこと言うのは恥ずかしいんですけど、ときどきクルマのキーを枕元に置いて眺めながら眠ったりして、“子どもみたい”って妻に笑われるくらいです(笑)。それまでのクルマも気に入ってはいたけど、こんな気持ちにさせてくれたクルマはありませんでしたね」

なるほど。お子さんが育っていく過程の赤羽さんの姿が瞬間的に想像できました。“クルマとはこういうもの”という英才教育を施した後、大きくなったら間違いなくアバルトは手元に置いたままときどきレンタカー、もしくは増車ですね。しばらくは走行距離を伸ばせない日が続くかもしれませんが、そうなるのはまだまだ先のこと。それまでたっぷり時間を使って、アバルトを楽しんでくださいね。

文 嶋田智之

アバルト公式WEBサイト