2008 ABARTH 500|アバルトの歴史を刻んだモデル No.074

2008 ABARTH 500
2008年アバルト500

新生アバルトの原点

これまで70回以上にわたって歴代のアバルトが送り出してきたモデルを紹介してきたが、今回は2007年のブランド復活の象徴であり、現在の595シリーズの原点といえる「アバルト 500」にスポットライトを当て、改めて振り返ってみることにしよう。

1971年にフィアットグループ入りし、その後しばらくの間、表舞台から姿を消していたアバルトだが、フィアットグループではグループ内のブランドの競技車両の開発を担い、活動を続けた。本連載でも紹介してきたようにランチアやアルファ ロメオのラリーカー、ならびにレーシングモデルを手掛け、数多くの栄光をイタリアに持ち帰った。


発表時に公開されたアバルト 500のCGイラスト。高性能を誇示するようにサーキットのスターティンググリッドが背景となっている。

しばらくその姿を潜めていたアバルトだが、2007年2月にブランドの復活がフィアットグループから公式にアナウンスされる。同年3月に開かれたジュネーブ・モーターショーではアバルトとして出展し、ブースにはアバルトが開発しラリーで活躍していた「グランデプント S2000 アバルト」を展示し、サソリの復活を全世界に告げた。

そして同年10月には新生アバルト初の市販モデルとして「アバルト グランデプント」が姿を現す。往年と同様にフィアットの量産モデルであるグランデプントをアバルトが高性能化したモデルで、往年のOTシリーズに相当するモデルといえた。


ブランドの復活を遂げたアバルト初の市販モデルとして2007年に登場した「グランデプント」。

チンクエチェント・ベースのアバルト登場

1960年代のアバルトを代表するモデルといえば、いうまでもなくフィアット 500をベースにアバルトマジックが施され、小粒ながら高性能でエンスージアスト垂涎の存在となったフィアット・アバルト 595/695シリーズである。コンパクトカーでありながら高い走行性能を秘めたそのクルマは、多くの自動車ファンを魅了。その人気は21世紀になっても色褪せることなく、新生アバルトから復活を求める声が高まっていた。

そうした世界中のファンの声に応えるかたちで2008年3月のジュネーブ・モーターショーで復活を遂げたアバルト 500。フィアット 500を高性能化したそのクルマは、往年と同様に、クルマ好きを魅了するアバルトらしい仕立てが特徴だ。


ボディサイドのストライプやドアミラーのアクセントカラー、ルーフのチェッカーマーキングなど往年のモチーフを採用し、クルマ好きを魅了する演出も忘れていなかった。

アバルトのキモといえるパワーユニットは、サソリのエンブレムにふさわしいパワフルなものだった。フィアット500は69psを発揮するSOHC 1240ccエンジンを搭載していたのに対し、アバルトは排気量1368ccの DOHC+ターボユニットが搭載され、最高出力はフィアット版の約2倍となる135psにまで高められていた。現在のラインアップに比べるとややローパワーに見えるが、発表当時は衝撃的なスペックだった。


フィアット 500同様ボディ同色のインストルメントパネルは受け継がれるが、ブラックのレザーステアリングやセンターコンソール、スポーツペダルが精悍さを感じさせた。

エクステリアはフィアット 500をベースとしつつ、ラジエターグリルを拡大すると共に補助灯が組み込まれ、サイドにもインテークが設けられたフロントスカートに独特の表情を実現。このほかリアハッチゲートに取り付けられたスポイラーとエアアウトレット付きのリアバンパー、8本スポークデザインの17インチホイールがアバルト 500の高性能さを物語っていた。


オフィシャルフォトのリアビュー。追加されたリアウイングとバンパー下から出る2本のエキゾーストエンドがパフォーマンスの高さを主張する。

マニア心をくすぐるアバルトのセンスを満載

そしてアバルトならではの仕上げが、マニアックなマーキングだ。ボディサイドに配されたフィアット・アバルト 595/695由来のストライプにより、モータースポーツの世界を思わせる強烈なアピアランスを放つ。さらには往年の850 TCのシンボルといえるルーフにチェッカーのマーキングを選ぶこともできた。細部を見れば往年のデザインを受け継ぐエンブレムが随所に散りばめられ、スタイリングを引き締めると同時にアバルトらしいスパイスの効いた走りを予感させた。


速度計の内側に回転計を配するメーターは、アバルトらしい精緻なフォントとスケールに仕立てられた。左下に備わるブースト計もドライバーの気持ちを昂らせた。

こうしてサソリのスピリッツが注入されたアバルト 500は、最高速度205km/h、0-100km/h加速7.9秒を発揮。小粒でも大排気量のスポーツカーを打ち負かせるパフォーマンスと、俊敏なハンドリングを備えていた。まさにアバルトの魅力を完璧に備えていたことから、世界中のクルマ好きを魅了し、日本でも本物を知るクルマ好きから圧倒的な支持を得た。ここにアバルトの復活が告げられたのである。


アバルト 500のノーズにはターボチャージャーで武装し135psを発揮する1368cc DOHCユニットが収まる。ヘッドカバーも演出され、サソリが高性能を主張する。

こうしてアバルト 500は新生アバルトを牽引するモデルとなり、その後数多くのバリエーションを展開。今もサソリを象徴する存在として愛され続けている。

2008 ABARTH 500

全長:3655mm
全幅:1625mm
全高:1515mm
ホイールベース:2300mm
車両重量:1110kg
エンジン形式:水冷直列4気筒DOHC+ターボ
総排気量:1368cc
最高出力:135ps/5500rpm
変速機:5段マニュアル
タイヤ:195/45R16
最高速度:205km/h
0-100km/h加速:7.9秒

 
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