2013 ABARTH 595 50th Anniversary|アバルトの歴史を刻んだモデル No.051

2013 ABARTH 595 50th Anniversary
アバルト595 50thアニバーサリー

595の誕生50周年を記念した限定車

往年のアバルトを象徴するモデルといえば、「フィアット・アバルト 595」を思い起こす方が多いことだろう。フィアット 500(チンクエチェント)をベースに、排気量を車名の由来である593.707ccまで拡大するとともに、吸排気系を入念にチューニングすることにより、最高出力は500に比べ5割増にもなる27hpを発生。最高速度は120km/hに達し、ひとクラス上のパフォーマンスを備えていた。

モデル名は排気量にちなんだものだが、594とはせず、カルロ・アバルトの美的感覚により、グラフィックが美しくなる「595」とされたといわれる。


「595 50thアニバーサリー」は、全世界299台の限定生産モデル。アバルトにとって重要なマーケットである日本市場には、その約1/6となる50台が導入された。

1964年2月には、さらに高性能なフィアット・アバルト 595 SS(イタリア語読みで“エッセエッセ”)が追加された。排気量こそ変わらないが、圧縮比を10.5:1まで高め、キャブレターを大径のソレックス34PBICに換装し、専用のインテークマニフォールドをはじめとする吸排気系の見直しを行い、最高出力32hp、最高速度130km/hをマークした。

こうしてフィアット・アバルト 595シリーズはデビューするや否や、高性能なクルマを求めるファンから絶大な支持を得て、レースでもすぐさま活躍。そのパフォーマンスの高さを広く知らしめたのだった。


595 50thアニバーサリーのボディカラーは通常のホワイトではなく、マット仕上げのトリプルコートの特別塗装が施された。

595は、1971年に生産が終了したあともアバルトを代表するモデルとしてファンから愛され、その人気は衰えることがなかった。2007年にアバルトブランドが復活すると、当時と同じようにフィアット 500をベースにしたアバルト 500が作られ、2013年には160psを発生する高性能版として、栄光の595の名を冠したアバルト 595が追加された。

初代フィアット・アバルト 595は1963年9月にアバルトの地元で開かれたトリノ・ショーで発表されたが、それから50年後の2013年9月、フランクフルト・モーターショーでは595の誕生50周年を記念した「595 50thアニバーサリー」が突如として姿を現した。全世界299台限定モデルとして登場した同モデルは、世界中のアバルトファンの興奮を誘った。


「595 50thアニバーサリー」のリアビュー。コンパクトなサイズながら並ならぬ存在感を放った。

アバルトの限定モデルとしては「500 0 da 100(ゼロ・ダ・チェント)」、「695 トリブート フェラーリ」、「695 エディツィオーネ マセラティ」に続くもの。この頃は特別な限定車には最強モデルに与えられる「695」の名前が与えられていたが、595 50thアニバーサリーは、595の誕生50周年を記念した限定モデルということで、あえて「595」とされた。しかし性能的には695と同等であった。

記念モデルならではの特別な仕立て

595 50thアニバーサリーには伝説となったフィアット・アバルト 595のスピリットとそのエッセンスが盛り込まれていた。仕立ては往年の595のイメージを再現したもので、ボディサイドの595ストライプを始め、エンブレムやバッジは当時のデザインを再現したものが与えられた。


リアハッチに付くバッジは往年のモデルに敬意を表し、「FIAT ABARTH 595」とされた。

注目したいのはボディカラー。普通のホワイトではなく、マット(艶消し)仕上げのトリプルコートの特別塗装が施されており、ただならぬ存在感と凄みを放った。

また、これまでに送り出された限定モデルには、すべてレーシーなスポーツシートが備わっていたが、595 50thアニバーサリーは当時の595のインテリアデサインをモチーフに、レッドとホワイトのレザースポーツシートを採用。スポーツ走行に求められる機能を確保したうえで、往年の雰囲気を再現したデザインが与えられた。


595 50thアニバーサリーの最大の魅力が往年の595のデザインを再現したレッドとホワイトのレザースポーツシート。

ダッシュボードも艶消しのレッドで仕上げられ、クラシカルな仕上げにより誕生50周年を記念した限定モデルであることが示された。またセンターコンソール下部の小物入れ周辺に、限定モデルを表わすシリアルナンバー入りの特製プレートが添えられた。


インテリアは往年の595を再現したもので、ダッシュボードは艶消しのレッドで仕上げられ、クラシカルな雰囲気を漂わせた。

フロントに搭載されるのは695 トリブート フェラーリと695 エディツィオーネ マセラティと同じ最高出力180PS、最大トルク25.5kgmを発生する直列4気筒DOHC 1368ccのターボユニット。

もちろん背圧をコントロールするデュアルモードを備えたレコードモンツァ エキゾーストシステムが与えられ、パフォーマンスとアバルトならではのサウンドを発した。トランスミッションは、オートモード付きの5速シーケンシャル「アバルト・コンペティツィオーネ」が組み合わされた。

0-100kmh加速は7秒以下、最高速度は225kmhと、アバルトのトップグレードにふさわしいもので、ブレンボ製4ポッドキャリパーと305mm径フローティングローターのブレーキングシステムにより、その性能にふさわしい制動力も与えられていた。


ホイールは「695トリブート・フェラーリ」と同デサインだが、リム部にレッドのピンストライプが追加され足元を引き締めている。

日本には50台導入

こうしてアバルトとして初のリバイバル仕様となった595 50thアニバーサリーは全世界299台限定生産で送り出され、アバルトにとって重要なマーケットである日本には、単一国としては異例といえる50台が導入された。日本での全国メーカー希望小売価格は4,849,200円とされ、発表されるや即完売となる人気を集めてアバルトファンのガレージに収まった。しかしわずか50台限定だったため、当時手にできず今なお探しているファンも多いと聞く。

2013 ABARTH 595 50th Anniversary

全長:3655mm
全幅:1625mm
全高:1500mm
ホイールベース:2300mm
車両重量:1160kg
エンジン形式:水冷直列4気筒DOHC+インタークーラ一付ターボチャージャー
総排気量:1368cc
最高出力:180ps/5500rpm
変速機:6段マニュアル(オートモード付き)
タイヤ:205/40R17
最高速度:225km/h