ロマンと職人技が融合。アバルト×シチズンのコラボ腕時計、その真価とは。
アバルトとシチズン時計のコラボモデルとして、2025年4月10日に発売された「Series 8 ABARTHコラボレーションモデル」。この異業種によるコラボではどのような化学反応が起こったのか。完成したプロダクトに込められた思いやこだわりを探るため、シチズン時計本社の門を叩いた。
日本の時計史をめくるシチズン時計の歩み
1918年の創業以来、時計づくりへの情熱をたやすことなく、常に新しい技術を探求し、革新的技術とデザインや機能性の融合を図ってきたシチズン時計。懐中時計に始まり、1931年に初の男性用腕時計を完成したのち、50年代にはカレンダー付き時計、自動巻き時計、防水時計を実用化。60年代にはクリスタルガラスを腕時計に国産初採用したほか、電子式腕時計を生み出している。


1924年に作られた懐中時計(左)。1958年に登場したシチズン初の自動巻き腕時計「CITIZENオート」(右)
続く70年代には正確な時を刻む音叉式ムーブメントの開発、独自クオーツの採用、さらに世界初の太陽電池充電のアナログ式クオーツの開発など、数々の革新を生んだ。その歩みはそのまま日本の腕時計の歴史を語っていると言っても過言ではないだろう。


1971年に国産初の音叉式電子腕時計として発売された「ハイソニック」(左)。世界初の太陽電池充電のアナログ式クオーツ腕時計「クリストロンソーラーセル(1976)」(右)。
90年代には、場所を問わず正確な時刻を刻むことができる多局受信型のアナログ式クオーツ電波時計を世界で初めて開発。さらに電波時計と光発電を融合しながら、世界一の薄型を目指した腕時計の開発など、電波時計の先駆けとしての地位を揺るがぬものとした。
世界初の多局受信型アナログ式クオーツ電波時計(1993)
一方、シチズン時計がユニークなのは、電波時計や光発電といった時代の要請に応える先端技術を生み、それを磨き上げると同時に、伝統的な機械式時計の開発にも力を注いでいることだ。時計職人が手作業で調整した美しい動き、何十年あるいはそれ以上の時を刻み続ける「一生モノ」になり得る機械式腕時計には、道具を超えたストーリーが宿る。
シチズン時計が展開する、機械式時計に絞ったブランドが「Series 8(シリーズエイト)」だ。そのシリーズエイトをベースに開発されたABARTHコラボレーションモデルは、一体どんな時計に仕上げられたのか。開発に携わった方へのインタビューを通じて、コラボレーションモデルの魅力を探るとともに、そこに宿るクラフトマンシップに迫った。