知られざるアバルト

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Alfa Romeo 155 V6-TI DTM

アバルトの手による歴史的名作、『ランチア・デルタ・HF インテグラーレ』が2年連続でWRCタイトルを獲得した1987年。フィアット・グループは経営が困窮していた名門アルファロメオを、商標・組織ともに買収することになりました。

一方、当時すでにフィアット・グループのスポーツ部門として活動し、ランチアのワークスチーム“ランチア・スクアドラ・コルセ”も運営していたアバルトは、1991年に元レーシングドライバー兼テストドライバーのジョルジオ・ピアンタを、スポーティングディレクター(総監督)として指名。アルファロメオのモータースポーツ部門“ALFA CORSE(アルファ・コルセ)”は、ピアンタの指揮のもと、実質的にはアバルトの別名というべき組織となっていたのです。

かくして、かつては不倶戴天のライバルでもあったアルファロメオのために、アバルト技術陣はその持てる力を大いに揮うこととなりました。その成果が表れたのは1992年。このシーズンの<世界ラリー選手権(WRC)>を、6年連続コンストラクターズタイトルという偉業で終えたアバルトは、同一のコンポーネンツを流用したマシンを、<Campionato Italiano Velocità Turismo(イタリア国内ツーリングカー選手権:略称CIVT選手権)>に向けて開発し、同じ1992年シーズンから実戦投入ました。

そのマシンの社内コードネームには、アバルトの伝統にしたがって“SE”の文字が入れられ、プロジェクトの通算ナンバーから“SE051”と命名されました。それが『アルファロメオ155 GTA』です。『アルファロメオ155 Q4』をベースとするこのマシンは、『ランチア・デルタ・HFインテグラーレ』と同じ、直列4気筒DOHC16バルブ2,000ccのエンジンを横置きに搭載する、フルタイム4WDシステムを持った、『アルファ・コルセ』、つまりアバルトにとってはお得意の手法でまとめられたマシンでした。

1992年のCIVTでは全20戦中17勝を挙げコンストラクターズタイトルを獲得。ドライバータイトルでもランキングの1位から3位を占め、ニコラ・ラリーニがチャンピオンを獲得するに至りました。
そして翌1993年シーズンに当時世界で最も人気の高いツーリングカーレースだった<ドイツDTM選手権>での覇権を目論んだアルファ・コルセは、伝説のマシンを送り出すことになるのです。DTM選手権レギュレーション改定に伴って、アバルトが“SE057”のプロジェクトナンバーとともに開発した『アルファロメオ155 V6 TI-DTM』です。

『アルファロメオ155 V6 TI-DTM』は、新しいDTMレギュレーションで認められたV型6気筒2,500ccエンジンをフロントに縦置き搭載。155 GTAと同じく4輪を駆動するという、まさにモンスターの称号に相応しいマシンでした。ワークスであるアルファ・コルセからは、アレッサンドロ・ナニーニとニコラ・ラリーニという二人の元F1パイロットが搭乗。サテライトチームの独シューベル・エンジニアリングからは同じくF1経験を持つクリスチャン・ダナーと、前年のCIVTで頭角を現したジョルジオ・フランチアを起用していました。

そして満を持して参入した1993年シーズンは、『メルセデス・ベンツ190E 2.5-16』などのライバルを圧倒して全20戦中12勝を記録してコンストラクターズタイトルを獲得し、ドライバーズタイトルも10勝を挙げたニコラ・ラリーニが獲得するという、まさに圧勝と言うべき戦果を得ることになったのです。

010アバルトが“アルファ・コルセ”として初めて大きな成果を挙げることになった155GTA。1992年シーズンのイタリア国内ツーリングカー選手権を、まさしく圧倒する戦果を挙げた。

020アバルトの傑作、ランチア・デルタHF 4WDのメカニズムは、155 GTAにもほぼそのままコンバート。特に駆動系は、翌年以降の155 V6-TI DTMにも生かされることになった。

030155 V6-TIとして公表された際のオフィシャルフォト。この段階ではアバルトの関与は“公然の秘密”とされていたが、のちに“SE057”というアバルトの社内コードも判明した。

040実質的なワークスチームである“アルファ・コルセ”所属のニコラ・ラリーニ。1993年シーズンに全20戦中10勝を挙げてタイトル獲得。「ヌヴォラーリの再来」と称賛された。

050“アルファ・コルセ”を補完する独“シューベル・エンジニアリング”からも、クリスチャン・ダナーとジョルジオ・フランチアが搭乗する二台の155 V6-TIが活躍を見せた。

0601994年シーズン以降、155 V6-TIは大規模な改良が加えられ、DTMからITC(世界ツーリングカー選手権)に移行した1996年まで参戦するも、1993年の再現はかなわなかった。

INFORMATION

★『ABARTH 695 biposto 』がお目見え
>> https://www.abarth.jp/695biposto/

嶋田智之さんによる『ABARTH 695 biposto』レポートはこちら
>> https://www.abarth.jp/scorpion/driving_fun_school/4862

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>> https://www.abarth.jp/scorpion/scorpion-plus/4916