2015年JAF全日本ラリー選手権、第2戦<久万高原ラリー>レポート

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皆さん、こんにちは。
ムゼオ チンクエチェント レーシングチーム(以下、mCrt)ラリー部門ドライバーの眞貝です。

全日本ラリー選手権JN-5クラスにて、イタリア車での史上初の優勝という吉報をお届けしてからひと月弱、早くも第2戦の戦いである<久万高原ラリー>が5月8日(金)~10日(日)の日程で愛媛県久万高原町にて開催されました。

<久万高原ラリー>の特徴は何と言っても、その難しさ。
拠点となる美川スキー場跡地の標高は約1,100m、スペシャルステージの最高標高が約1,500mと聞いて想像できる通り、急変する「山の天気」との戦いがこれまで幾多のドラマを生んできました。また、昨年までの4年間はグラベル(未舗装路)ラリーでの開催となっていて、5年ぶりにターマック(舗装路)ラリーとして開催される今回、道路のコンディションの変化も勝負への重要な要素として影響してくることが予想されました。

0201日目終了時のサービス風景。マシンの調子は至極良好だが油断せず各部の確認を徹底する。

開幕戦にて幸先よく優勝という最高の結果を手に入れることができた我がチームですが、その内容は決して楽なものではなく、今年から参戦を始めたライバルチームの伸びしろを考慮すると、この久万高原ラリーでもまさに“紙一重”の戦いになることを覚悟し、チームは気合を入れて現地に向かいました。

ところで、今回は6月14日(日)に正式オープンする松山市の『アバルト愛媛(現:開設準備室)』様とタイアップし、ラリーのサービスパークにおいてプロモーション活動を行いました。ABARTHオーナーやファンの皆さんはもちろんのこと、まだ“ABARTH”というブランドをよくご存じでない皆さんにも、このブランドの魅力をより強く感じていただきたい。mCrtの願いもまさにこの一点で活動しているわけですから、今回の取り組みが少しでもお役に立てたならばドライバーとしてこんなにうれしいことはありません。

さて、迎えた大会初日、下見走行(レキ)をおこなった8日金曜日は気持ちの良い晴天に恵まれましたが、さすがに5年間、ラリーで使用されていなかった林道ステージの路面コンディションは極度に悪化。
日当たりの悪いセクションは、道路全体が緑色に見えるほど苔が生い茂り、おまけに、競技の本番となる土曜日の天気予報はあれよあれよという間に変化し“雨に濡れた苔の上を走る熾烈な生き残り競争になる”というのが参加選手間の一致した意見となりました。

030mCrtのテントは全日本ラリーのサービスパークでも一際目立つ存在。

そしていよいよ迎えた本番1日目の土曜日。
予想通り現地は朝から雨に祟られ、サービスパークは開幕戦とはまた異なった、ある種悲壮感といってもいいような緊張に包まれました。モータースポーツは“速く走って勝負を競う”ものですが、ラリーは“無事帰ってくる”という、当たり前のようなことが途轍もなく難しくなることがあります。幕を開けた<久万高原ラリー>はまさにそれを地で行く展開となりました。

競争相手が常に見えるサーキットレースとは異なり、ラリーは1分ごとに1台ずつステージをスタートし、そのタイムで争う競技ですから、ライバルとの位置関係が見えてくるまでの序盤戦はまさに“自分との戦い”です。

今回のように路面コンディションが極端に悪い場合、すべてのコーナーを限界ギリギリで走るというのは不可能なことなので、“抑え具合”をどれくらいに設定するか、つまり「あ、このコーナーは抑えすぎたな」「お、このコーナーは意外に危なかった…」ということの繰り返しのなかで、コースから飛び出さず、かつ見えない相手のペースを想像しながら、いかに適切なペースを見出すか、という勝負になります。

040タイヤメーカーのエンジニアと密に情報交換し、戦略を決めていく。

幸い、今回はSS1を走り出して間もなく、今回の路面と、マシンやタイヤのマッチングがそれほど悪くないことが感じ取れ、十分に抑えたつもりでもクラスのステージベストタイムから1秒未満の2番手タイムで上がることができました。

続くSS2、勝負に大きく影響するロングステージでは、2番手に11秒もの大差をつけるベストタイムを刻めたことから、この最悪な路面コンディションが快適に感じられるほど気持ちを楽にして戦いを進めることができました。

それでもやはり今回の路面コンディションは危険極まりなく、SS3とSS4では前を走る上位クラスの大きなアクシデントによりステージはキャンセルに。走れば走るほどリタイヤ車が増えていく、まさにサバイバルな展開が続きました。

ようやく競技が再開された1日目の最終ステージであるSS5、SS1/SS2でうまく見出せた“適切な”ペースで走りきると、クラスベストタイムはもちろん、なんと国産4WDターボ車で構成される上位クラスに割って入る総合3番手のタイムを刻み、この日終了時点でも総合3位という、2輪駆動車としては過去にも聞いたことがない好成績を残すことができました。

050ライバルとのタイム差やコース状況をチームメンバーに伝えるのはコ・ドライバーの重要な役割。

明けて競技2日目、最終日。
前日の雨が嘘のように晴れ渡った気持ちのよい朝となりました。
一日目終了時点でのクラス2番手に対するアドバンテージは35秒。
大きい差であるように見えますが、まだ65kmものステージ距離を残していることを考えると、まだ安全圏にあるとは思えません。

この日の作戦は“35秒の貯金を使い切ってでも安全に走りきる”こと。
ステージごとにライバルに差を縮められることは必ずしも快適ではありませんが、日なたと日陰で大きく路面のグリップが変わることが予想される以上、安全を取ることが正しい選択であると信じてスタートしました。

この日最初のSS6。
いきなり今回のラリーの最長ステージとなりましたが、走り出すと前日までの快適なマシンバランスは一転。限界域のつかみどころがなく、抑えて走っているつもりでも何度かコースから飛び出そうな危うい場面に出くわしながらの走行となりました。

ステージタイムは当時クラス2位の選手から8秒弱の遅れ。
予想よりは小さい差で済んだものの、「この運転の苦戦具合からすると危ないかも…。」という小さな不安が脳裏をよぎりました。

そして迎えたSS7は、前ステージとは打って変わって日当たりがよく、ガードレールもきちんと整備された、いわゆる“リスクの少ない”ステージ。努めて冷静にしていたつもりですが、今思えばここも悠然と貯金をはたき、続くサービスで車両のセットアップを変更するまで我慢の戦いを続けるべきだったのかもしれません。

060アクシデントを乗り越えゴールを目指す。

コースオフしてしまったのは、本当に自分でも、またラリー後に他の選手に聞いても“なんでもない”登りの低速コーナー。気づいたときには大きなアンダーステアに見舞われ、マシンの右側2輪ともが深い側溝にはまってしまっていました。

後続車両を安全に誘導しつつもがき続け、マシンを溝から出すことができたのは10分ほど経過した後。
今までの自分であったら迷わずリタイヤを選択していたと思いますが、この先にあるギャラリーポイントで『ABARTH 500 Rally R3T(ラリー R3T)』の走りを楽しみに待っている大勢のファンがいてくれると思うと、そこでラリーを終えるわけにはいきませんでした。

サスペンションにダメージを負って思うように走らなくなってしまったマシンでしたが、何とかすべてのステージを走りきり、ギャラリーの皆さんにマシンをご覧いただき、最低限中の最低限である“完走”だけは果たすことができました。

今回のアクシデントは、私自身のドライバー人生を振り返っても最も不可解で、愚かなミス。この精神状態を次戦に持ち越してはいけないという思いから、ラリー終了後にステージに入り、コースオフしたコーナーを改めて分析しました。

070チームメンバー全員、リベンジに向け燃えています。

敢えてその結果は書きませんが、今は心のモヤモヤも晴れ、次戦に向けて新たな“気合全開!!”状態です。

応援してくださったファンやスポンサーの皆様、アバルト愛媛の皆様、そしてチームメンバーに優勝という結果ご報告できず、何とお詫びしたら良いか言葉も浮かびません。この失点を取り返すには次戦以降、再び煌めくタイムを刻んで、良い結果を出すこと以外に無いと考えています。

ダメージを受けたマシンを再び100%の状態に復帰させ、さらには今まで頭の中でじっくりと温めていたアイテムを本格導入し、皆さんをアッと驚かせたいと思います。

引き続き、mCrtの『ABARTH 500 Rally R3T』への応援をどうぞよろしくお願いいたします!!

INFORMATION

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4/29に富士スピードウェイにて開催されるABARTH専用スポーツ&セーフティドライビングレッスン。
次回開催地、オートポリスへの参加申し込み、締め切り迫る。
受付期間:4/15〜5/23
>> https://www.abarth.jp/drivingprogram/drivingacademy/

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受注期間:4/21〜5/22
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Edit & Text:眞貝知志