2014スーパー耐久Rd4岡山国際サーキット レポート
ムゼオ チンクエチェント レーシングチーム
ドライバー 大賀裕介
9月6日、7日に静岡県富士スピードウェイにて、2014年スーパー耐久シリーズ第3戦が行われました。シーズン後半戦の始まりとなるこの大会は、3時間のレースで争われます。ムゼオ・チンクエチェント・レーシングチームの49号車、アバルト695アセットコルセは、ST4クラス17台中、予選15位、決勝11位という結果を残しました。前半戦の完走第一というレースから、今回は10位まで与えられるシリーズポイントの獲得が目の前に見えるところまで攻めるレースができました!今回はドライバーの大賀裕介目線で、レースウィークのドライバーのお仕事や悩み(笑)、喜びまでをレポートいたします。
私自身「はじめてのスーパー耐久参戦」から3レースを経験し、この可愛くも手強いマシンの走らせ方、レース運びを学んできましたが、その成果をしっかりと結果に繋げていかなければなりません。また、今回から私がチームのAドライバーとしてドライバー編成を変更してもらい、今までのCドライバーとして挑むレースから比べると、予選結果に私のタイムが直接影響すること、そしてチームの顔としての責任から、気を引き締めて岡山国際サーキットへ向かいました。金曜日のテスト走行では、朝は雨で路面が少し濡れていたものの直ぐに乾き出し、ドライでのマシンセッティングの確認と自分の走りの練習をすることができました。スーパー耐久では予選前日にあたる金曜日のテスト走行で、コースと気温や路面状況に合わせたマシンセッティングができるかどうか?が重要です。
エンジニアとドライバーが協力して、マシンの調整を行っていきます。前戦まではコーナー立ち上がりでアンダーステアが強かったのですが、今回はセッティング変更が良い方向に決まってきたことで、この症状が改善されていました。その結果フロントタイヤの傷みが少なくなり、決勝に向けて手ごたえを感じることができました。また私自身のドライビング面に関して、このレースからコーナーへのアプローチ区間でのブレーキの使い方とハンドリングを変更しました。昨シーズンまで慣れてきた「フォーミュラカーの走らせ方」から脱却しない限りはこの走り方はできず、初めは上手くできなかったものの、この金曜日の最後にはマスターすることができ、土曜日の予選へ向けての良いテストディとなりました。
土曜日の午前中には参戦ドライバー全員が集まってのブリーフィングが行われます。レースでの事故を防ぐための意見交換、ルールの確認などが主な内容です。もちろんレースを争うライバルチームも参加していますから、バチバチの緊張感の中で行われるわけですが、私自身はこのブリーフィングで一気にスイッチが入る感じがします。予選は土曜日の昼から行われ、残暑と言っても良いくらいの暑さでした。Aドライバーの私はチームの先陣を切って予選に挑みます。今までの予選では、ほかのマシンに進路を阻まれるなどの理由で満足にアタックできないことが多かったことの反省から、計測2周目までは前後の間隔を調整し、3周目からアタック開始。ニュータイヤのグリップ力を感じ、目一杯のブレーキングを心がけて走ります。
1つのコーナー立ち上がりでアクセルコントロールを ミスしてしまいましたが、タイムは1分48秒1と、前日のテストから1秒半の短縮をすることができました。
無線で「ピットインするよ」と伝えると「もう少しタイム短縮して!」との指示。この時の心境は「ヤバイ!もうタイヤがグリップダウンしているのに…でもやるしかない!!
クーリングラップを挟んで、再度アタック。先ほどの反省からミスも無く、まだ攻められると感じたところは攻め、さらに良い走りができたのですが、やはりタイヤのグリップのピークは過ぎており、ほぼ同じタイムを記録。順位アップはなりませんでした。それどころか「グリップダウンしたタイヤで同タイムを出せるということは、1度目のアタックではもっとタイムが出せたんだ…と反省する結果となりました。このことも踏まえて、チームとして順位アップを目指すためにBドライバーの蘇武選手へすぐさまフィーリングなどを知らせました。今期チームを組むドライバーのチームワークはバッチリ!
挑んだ蘇武選手のタイムは1分47秒4というかなり良いタイムをマーク!A,Bドライバー合算からなる予選順位はST4クラス17台中15位となりました。自分がうまくタイムを出せなかった悔しさは残りますが、チームワークの良さを生かしてタイム短縮できたこと、マシンのフィーリングの良さには決勝への期待感を感じることができました。
迎えた日曜日の決勝は暑さも増し、マシンにもドライバーにも厳しいコンディション。でも、ピットウォークではお客様と楽しくリラックスして過ごすことができました。マシンとドライバー、そしてレースクイーンを間近で見られるピットウォークは、本当にたくさんのお客様で賑わっていました。スタート担当は蘇武選手、そして私が乗り、最後に白坂選手という作戦です。
レーススタートから2台ほど追い上げた蘇武選手ですが、2周目に少しコースオフ。それでもスタート後で混乱する中を、接触することなく走ってくれました。1時間を走り終え、いよいよ私への交代。ピットイン直前にリアタイヤがグリップダウンしてきたとの無線を受け、フロントタイヤ2本の交換予定から、4本タイヤ交換する作戦に変更しました。ピットイン時間は長くなってしまいますが、時間を犠牲にしても無事完走、そしてハイペースで追い上げるための作戦 変更に、乗り込む前に気合を入れました。コースインして2周目にはこの日のチームベストタイムをマークし、5周目まではタイヤを気にせずできる限りの走りをすることができました。今までは過剰に痛みの激しいフロントタイヤを労わらなければいけなかったのですが、金曜日のテストから好調な「リアタイヤをうまく使えるセッティング」のおかげで、ペースアップすることが可能になっていました。
前に見える同じクラスのマシンが少しずつ近づいてきます。予選では遥かに速いタイムをマークしていたトヨタ86に追いつくことができるペースで走れている!?無線で確認すると、ライバルチームと私たちのペースがほとんど変わらない!ということでした。
今年初めて結果に対しての手ごたえを感じることができましたが、同時に問題も発生しており、左コーナーのみ原因不明のアンダーステアが酷い状態になっていました。ドライビングでカバーできるか試行錯誤して乗りましたが症状が消えることは無く、問題の無い右コーナーでタイムを短縮し、1周のペースを保つことに努めました。ピットイン予定が近づいてくると、リアタイヤが極端にグリップダウンし、蘇武選手の時と同じ症状に……。原因は、前戦の富士でも悩まされたタイヤカスの付着です。白坂選手へ交代する際にタイヤを4本交換するようピットに無線で連絡しました。他チームのピットインの関係もありましたが、自分のスティントを9位でバトンタッチすることができました。走りばかりが注目されがちなレースですが、ピットインは大事な場面。コースで1秒短縮するのはとても難しく、ピット作業での遅れは致命的なのです。1時間の走行を終えてピットインすると「ホッとしてしまうところですが、ドライバーチェンジでは無線の配線からベルト装着までの作業を確実に行わなければなりません。レースウィーク最後の大仕事です!無事交代後の最後のスティントを白坂選手も速いペースで走行し、私と同じトラブルを抱えながらもマシンを労わり走行してくれました。スーパーGTにも出場している白坂選手はテストからオフ、レースまでの移動中もたくさんアドバイスしてもらったり、相談にも乗ってもらったりと、とても頼もしい先輩です。無事にゴールまでマシンを運んでくれる安心感と、ピットインで11位まで遅れたポジションをアップしてくれ!という願いをもってチーム全員で見守りました。
10位のチームまで、あと十数秒まで迫ったところでチェッカー。今年初のポイント獲得まであと少しまで迫るレースをすることができました。念願のポイント獲得にはあと少しで届きませんでしたが、今年4レース目にしてようやくそれが見えるレースをすることができ、手ごたえを感じることができました。同じST4クラスに参戦するライバルたちのマシンから比べると不利な条件の多いアバルトですが、少しでも上を目指して取り組んできたことが、だんだんと結果に現れてきたことは、チームにとっても私にとっても嬉しいことです。
予選での自分が成果を出せなかったことをしっかりと反省し、今回の良い流れをもっと良くしていけるよう、これからも取り組んでいきます。
応援いただいている皆様には結果以上に内容が良くなってきたことをご報告できることに嬉しく感じておりますが、やはりレースは勝負であり結果は一番大事であることには間違いなく、今年の残り2レースで更に上を目指して、来年につなげる走りをお見せしたいと思っています。
次戦は10月25日の鈴鹿サーキットでのレースです。
チームとしてもホームコースでのレース、是非応援に来てください!