「東京オートサロン2011」アバルトブランドマネジャー アンドレア・カラットリ氏インタビュー

日本のABARTHは東京オートサロンから始まった

今年もアバルトはアジア最大のチューニングカー/ドレスアップカーの祭典『東京オートサロン』にブースを出展した。2009年2月から日本に正式に導入されたアバルトは、その発表の場として東京オートサロンを選択しており、じつは縁のあるイベントなのだ。様々なチューニングカーが並ぶ幕張メッセのなかでも歴史のあるイタリアン・ブランドとして異彩を放つアバルト・ブースで、アバルト・ブランド・マネージャーを務めるアンドレア・カラットリに話を伺った。

「アバルトの60年以上におよぶ歴史は、チューニングの歴史でもあります。おもにフィアット車をベースに、力強く、そしてデザイン的にも優れたものへと磨き上げていく情熱がアバルトの魂なのです。そんなアバルトを日本でデビューさせるにあたって、チューニング文化の発信源となっている東京オートサロンはぴったりでした。2009年は輸入車だけのパビリオンがあり、そこにアバルト・グランデプントとアバルト500を出展しました」。

ーーその時の来場者の反応はどうでしたか?

「お客様には2つのタイプの方がいらっしゃいました。すぐにブースを訪れてくれたのは、アバルトを良く知っていてクラシックなモデルを持っていたり、日本導入を待っていたような人達。早速クルマを買って頂いたりもしました。そしてもう一方は、アバルトを知らなかったけれど、コンパクトなスポーツカーで「カッコイイね」と言ってくれる人。新しくアバルトのファンになってくれたのです。年々少しずつそういった人が増えてきているのが嬉しいですね」。

ーー今や日本は、世界で5番目にアバルトが売れる市場になりました。当初からそれだけ人気になると感じていましたか?

「アバルトというブランドには大きなポテンシャルがあることはわかっていました。だけど当初はMTしか用意がなかった。日本はMT比率が低いですから、どれぐらい受け入れられるかはわからなかったですね。けれども、普段はATに乗っている人も「アバルトならMTがいい」と言ってくれて想像以上の人気になったのです。ビックリしたのは、AT限定免許しか持っていない女性の方がアバルトを気に入って、わざわざMT免許を取得してから買いにきてくれたこと。そこまで好きになってくれて本当に嬉しかった。ただ、そうは言っても「奥さんや彼女がAT免許しか持っていないので諦める」というような方もいらっしゃいます。昨年の秋にはATモード付5速シーケンシャルトランスミッションを搭載したアバルト500Cを導入しました。これならAT限定免許でも問題なく乗れますよ」。

ーー今でもアバルトを取り扱っているディーラーは全国で4店舗です。少なくないですか?

「利便性を考えれば多いに越したことがないのかもしれませんが、イタリア本国やヨーロッパでもアバルトを扱うディーラーは少ないのです。フィアット車など他のクルマとは完全にわけた専用のショールームは、例えばフロアをレーシングトラックのアスファルトのような仕上げになっていたり、お客様用の椅子は赤い革のスポーツシートだったりと、こだわった造りになっています。アバルトはただ移動の足にするだけの乗り物ではなく、情熱のクルマ。いろんな意味で普通のクルマとは違うのです。
 また、ディーラーのセールスマンも専用のトレーニングを受けていて、大変にスキルの高い人達ばかりです。セールスの話だけではなく、アバルトの歴史などにも詳しいですし、みんな運転が大好きですからエンスージャストなお客様の相談にもキチンと対応できます。トレーニングでは冨士スピードウエイなどを走ったりもしますので、自分たちが販売しているアバルトの本当のポテンシャルも知っているのですよ。そういった意味でディーラーの数は少ないですが、内容を充実させているということです」。

ーー専門ディーラーやアバルトに精通したセールスマンを用意するというのは大変なこだわりですね。

「アバルトは特別なブランドなのです。導入当初にアバルトのクラシック・モデルに乗っている人達が「これは本物のアバルトだね」と言ってくれました。アバルト500やアバルト・グランデプントに試乗して、エンジンの回り方やサスペンションのフィーリングなどからそれを感じてもらえたのです。普通のフィアットにアバルトのロゴを付けただけのクルマ、最近の日本語では「なんちゃってアバルト」なんて言うんですかね(笑)、そういったものとは全然違う。ディーラーやセールスマンも特別ですが、イタリアの本社も特別です。アバルトはフィアット・グループのブランドの一つですが、オフィスの建物も別ですし、製品開発、マーケティングなどすべてがアバルト専属です。そこで働いている者はみんなクルマが大好きでアバルトに対してもの凄く情熱をもっています。だから特別なクルマを生み出すことができるのです」。

ーー特別なクルマであり、ディーラーなども内容を濃くしている。それはあまり多くの販売台数を考えていないということでもありますか?

「より多くの人にアバルトの良さを知ってもらいたいとは思っていますが、大衆車のようになりたいわけではないのは確かですね。世の中のすべての人にちょっとずつ好きになってもらうというよりは、凄く好きになってくれる人を増やしたい。ただ、アバルトはコンパクトで扱いやすいという面もあります。スーパーカーは高性能で非常に刺激的ですが、パフォーマンスを堪能するには場所を選びますし、毎日乗るのは大変です。その点、アバルトなら通勤や買い物に使って頂いてもまったく無理はありません。それでいてサーキットでも速く走れてしまうのです。ですから、今よりももうちょっと多くの人にアバルトの良さを知ってもらって仲間を増やしたいですね。
 最近の日本の若者は、クルマに興味がなくなってしまったと聞きますが、一度でいいから乗ってみてください。その情熱的なフィーリングを感じたり、歴史を知ったりしてブランドを理解してもらえば、アバルトのことが頭から離れなくなるでしょう。ディーラーでは試乗車も用意していますから、是非一度足を運んでみてください」。