【ABARTH CLASSICHE】アバルトの歴史を刻んだモデル No.16

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2008 ABARTH 500 Assetto Corse Limited Edition
アバルト500アセットコルセ リミテッド エディション

熱き血筋を継承した闘うアバルト

2007年のジュネーブモーターショーでブランドの復活を遂げたアバルト。市販モデルの販売と並行して 熱き血筋を受け継ぐコンペティションモデルの開発も再開され、アバルトの闘いのスピリットは完全に蘇ることとなった。

復活後のアバルトは、まずグランデプントを送り出し、続いて往年のモデル展開と同様にフィアット500をベースとしたアバルト500をラインナップに加えたことはご存じの通り、さらに500をベースに競われるワンメイクレースの“アバルト500トロフィーシリーズ”をスタートさせた。このシリーズ戦のために用意されたコンペティションモデルが「アバルト500アセットコルセ」だ。アバルト500トロフィーは、アマチュアドライバーのためのイコールコンディションが徹底されたワンメイクレースで、イタリア国内で開催されるとともに、欧州を舞台に繰り広げられる“アバルト500ヨーロピアントロフィー”も行われ、こちらはWTCC(世界ツーリングカー選手権)のサポートレースとして展開された。

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往年の1000ベルリーナコルサを思わせるパステルグレーのボディカラーとストライプのグラフィック、49のゼッケンが初回限定モデルの特徴だ。

このような背景から誕生した500アセットコルセは、“闘うアバルト”のスピリットを忠実に受け継ぎサーキットに特化したモデルとして製作されている。ちなみに「アセットコルセ」はイタリア語で「レース用に設えた」を意味するもので、その名は1965年に登場した「フィアットアバルト695SSアセットコルサ」を起源とする。1.4リッターのクルマとしては圧倒的なパフォーマンスに加え、随所にアバルトならではといえるマニアックなデザイン処理が施されていることは見逃せない。闘うマシンでありながら、単なる機械の領域を超えた美が宿っているのである。かつてイタリアで最も美しくマニアックなクルマを問われると、フェラーリではなくアバルトと答えるエンスージァストが圧倒的に多かったというエピソードがあるが、それもうなずける機能美がアバルトらしさの現れだろう。

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500アセットコルセの初回限定仕様には、ダッシュボードにはシリアルナンバーが記されたプレートが取付けられている。

2008年に発表された500アセットコルセの初回生産分は“リミテッドエディション”として展開され、往年のアバルトテイストを盛り込んだマニアックな仕立ては世界中のファンから賞賛の声を集めた。ボディカラーは往年のベルリーナコルサにちなんだパステルグレーに塗られ、1949年にアバルト社が設立されたことにちなみゼッケン49を付けて49台のみが生産された。リミテッドエディションはあっという間に完売となり、その多くはレースに出ることはなくコレクターのガレージに収まった。なおトロフィーレース参戦用の500アセットコルセは、続いてビアンコガーラ(ホワイト)のボディカラーで用意され、こちらは限定ではなく生産が続けられた。

04軽量化のため走りに必要な装備以外はすべて剥ぎ取られたコクピット。ロールケージやカーボン製のシフトボックスとスイッチパネルが競技用であることを主張する。ステアリングホイールはサベルト製のスウェード巻き3スポークタイプを装着する。

500アセットコルセのエンジンは、500と基本的には共通だが、ターボチャージャーを大型のギャレット製GT1446に換え、吸気、排気のリファインとマネージメントのプログラムを変更することにより190hpを絞り出した。またエンジンルームが狭く温度が上昇しやすいことに備え、エンジンの吸気はフードに設けられたNACAダクトから冷気を取り入れ、レース時に安定した性能を発揮できる構造とされた。

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エンジンは500と排気量こそ同じだが、大型のターボチャージャーの採用や吸気および排気のリファインマネージメントプログラムの変更により190hpを発揮した。

エンジンのパワーアップに伴い足回りも大幅に強化された。フロントはマクファーソンストラット式の形式こそ変わらないが、専用のダンパーとハードなスプリングが組み込まれた。リヤのダンパーとスプリングも専用品で、ダンパーは別体式のサージタンクを備えたコンペティション用の本格タイプとされた。ブレーキはフロントが305mm径のディスクローターに4ポッドキャリパー、リヤは264mm径のディスクローターに2ポッドキャリパーが組み合わせられ、さらに専用のレーシングパッドで強化。ホイールはOZレーシングが500アセットコルセ専用に製作した7J-15サイズのその名も“スコルピオーネ”で、195/50R17のタイヤが組み込まれた。

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ホイールはOZレーシングによる500アセットコルセ専用品。サソリのロゴが配された15インチサイズの“スコルピオーネ”が組み込まれている。

500アセットコルセの基本的なボディラインはノーマルの500と変わらないが、フロントまわりではメッシュを基調に“ABARTH”とペイントされたフロントグリルが、ただものでないことを物語る。エンジンフードにはNACAダクトのほか、エンジンルームの熱気を抜くアウトレットルーバーも設けられた。エンジンフード、リヤハッチのロックは、レーシングマシンでおなじみのピン固定式となる。さらにリヤサイドウインドウとリヤウインドウは軽量なプレキシ製に変更され、ルーフ後端には角度を調整可能なウイングが備わる。このほか不要な装備を削ぎ落とすことにより、車両重量は500より180kgも軽い930kgにまでシェイプアップされた。

エンジンルームの温度が上昇し易いため、吸気はフードに設けられたNACAダクトから冷気を取り入れる。放熱のために右側にはエアアウトレットが備わる(左)。コンペティションモデルだけに、リヤハッチにはウイングが備わる。あくまでも実戦に向けた装備だけに角度調整が可能で、好みのセッティングを施すことが可能(右)。

コクピットは競技用に徹底して作り込まれている。軽量化のため走りに必要な装備以外はすべて剥ぎ取られ、一方で車内に張り巡らされたロールケージやカーボン製のシフトボックスとスイッチパネルが競技用であることを主張する。ステアリングホイールはサベルト製のスウェード巻き3スポークタイプで、乗降性を考えて脱着式とされた。シートはヘッド部のサイドサポートまで備わるサベルト製のフルバケットタイプで、500アセットコルセのロゴが刺繍で入れられている。

(左)シートはヘッドサポートまで備わるサベルト製フルバケットタイプで、500アセットコルセの刺繍によるロゴが見せ場を作っている(左)。アクシデント時の安全性を高めることに加えボディ剛性を高めるロールケージは、ジャングルジムのように組まれている(右)。

このように走りを突き詰めた500アセットコルセだが、かつてのアバルト同様に遊び心も忘れていなかった。エンジンフードのダクトを始め、フットレスト、バッテリーカバー、ドア内張り、バケッシートなど専用のパーツにはサソリのマークが入り、アバルトであることを主張している。過去のモデルと同様にただ単に速さだけを追うのではなく、マニアックなサソリの美学で仕上げる。その哲学は500アセットコルセにも貫かれていたのである。

スペック

2008 ABARTH 500 Assetto Corse

全長 :3740mm
全幅 :1640mm
全高 :1460mm
ホイールベース :2300mm
車両重量 :930kg
エンジン形式 :水冷直列4気筒DOHC4バルブ+ターボチャージャー
総排気量 :1368cc
最高出力 :190hp/6500rpm
変速機 :6段マニュアル
タイヤ(F/R) :205/50R17