1965 FIAT ABARTH OT1300|アバルトの歴史を刻んだモデル No.007

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1965 FIAT ABARTH OT1300
フィアット・アバルト OT1300

美と強さを兼ね備えたレーシング・マシン

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リヤカウルは後方を支点に開く。リヤウインドーは後端が跳ね上がったダックテール形状となっており、スポイラーも兼ねていた。

常にレースでの勝利を追い求めて、ABARTHは様々なレーシング・マシンを製作し成功を収めてきた。1960年代に入り1962年から現在のWECの前身といえる国際GTマニュファクチャラーズ・チャンピオンシップが始まり、GTの1300cc 以下のクラス(GT1クラス)には『ABARTH SIMCA 1300(アバルト・シムカ1300)』が挑んでいた。

『ABARTH SIMCA 1300』は1962年シーズン途中からの参戦だったため、最終的にシリーズ3位に終わるが、1963年シーズンはアルファ・ロメオとの激戦を繰り広げた結果、2位に。しかし、翌1964年から本領を発揮して2年連続でGT1クラスでチャンピオンの座を勝ち取った。

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当時アバルト社が発行したOT1300のカタログ。左右21.4cmの小さな一枚もので、3色刷りのシンプルな構成だった。

こうして大成功を収めた『ABARTH SIMCA 1300』の後継モデルとして1965年に送り出されたのが『FIAT ABARTH OT1300(フィアット・アバルトOT1300)』なのである。『ABARTH SIMCA 1300』では『SIMCA 1000(シムカ1000)』のフロアパンを始めとするコンポーネンツを使用していたが、『FIAT ABARTH OT1300』では『FIAT 850』の足回りなどを利用していた。

ABARTHは既に『FIAT 850 BERLINA(フィアット850ベルリーナ)』をチューニングした『FIAT ABARTH OT850 BERLINA(フィアット・アバルトOT850ベルリーナ)』と『OT1000 BERLINA』を送り出していた。そのため、同じ『FIAT 850』ファミリーに属するという解釈から”OT”の名がOT1300に使われたと思われる。

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この時期のエンブレム上の文字回りはイタリアン・トリコロールとなり、サソリがリアルなデザインになっていた。

余談だが『FIAT ABARTH OT850/1000』のOTは”Omologato Turismo”の略称であり、ツーリングカーのホモロゲート・モデルを意味する。しかし『FIAT ABARTH OT1300』はGTカテゴリー用のモデルであり、辻褄が合わないところがあるがカルロ・アバルトはあまり気にしていなかったようだ。

こうして送り出された『FIAT ABARTH OT1300』は60年代に作られたレーシング・マシンの中でも1、2を争うほど機能と美を両立したデザインが採用されていた。前後カウルにFRPを用いることによりデザインの自由度が高まり、必然性のあるデザインの中にルーフにはキャビンに冷気を導くペリスコープ(潜望鏡)や後端を跳ね上げたリヤウインドーなど遊び心を盛り込んだフィニッシュは、エンスージァストの心を掴むのだった。ちなみにFRP製のボディ・シェルを製作したのはトリノのカロッツェリア・シボーナ&バサーノである。

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キャビンに冷気を導くダクトのペリスコープ(潜望鏡)はサソリの尾を思わせる。そのデザインはアバルトならではの美的センスを感じさせる。

メカニズム的に見てゆくと、フロアパンとサスペンションを『FIAT 850』から転用するが、実質的には100%アバルト製といえた。リヤに積まれる排気量1289.5ccの水冷DOHC直列4気筒エンジンは、これまでアバルトが開発した4気筒の1600ccと2000ccエンジンの経験を基に新開発された。オイル潤滑はドライサンプを採用し、ダブル・イグニッション、そしてツインチョークのウェーバー45DCOE9キャブレターを2基組み込み、10.5:1の圧縮比から147hpの最高出力を発揮した。もちろんエンジンの搭載方法はアバルト伝統のリヤエンジン・レイアウトが踏襲されていた。

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コクピットと呼ぶに相応しいスパルタンなダッシュボードに速度計は無く、必要最小限の計器類が備わるだけだ。

1965年に発表された『FIAT ABARTH OT1300』は、グループ4の義務生産台数である50台を製作し、翌1966年5月1日にホモロゲーションを正式に取得した。こうして1965年6月5日に行われたニュルブルクリンク1000kmで『FIAT ABARTH OT1300』はデビュー戦を迎え、1.3ℓクラスの1〜3位を独占する幸先の良い滑り出しを見せた。

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フロントカウルの中はラジエターとフューエルタンクとバッテリーが備わるだけ。独特な鋼板のボックス形状のフレームが分かる。

その後ムジェロ・グランプリ、コッパ・ディ・エンナ、ホッケンハイム・グランプリ、ツェルトヴェグ500kmでクラス優勝を果たし、ニュルブルクリンク500kmではクラス優勝のみならず総合優勝する活躍を見せた。こうして1964〜65年に『ABARTH SIMCA 1300』で勝ち取った国際スポーツカー選手権のGT1クラス王者の座を、1966年シーズンは『FIAT ABARTH OT1300』が引き継ぐのである。

1966年末には細部をリファインしたシリーズ2が登場する。スタイリングで最大の特徴は、ルーフに設けられたキャビンに冷気を導く、サソリの尾を思わせるペリスコープだ。またボディラインと同化したリヤウインドーは、後端が跳ね上がったダックテールと同等の効果を発揮する形状とされた。サスペンションはそれまでのフィアット850のセミ・トレーリングアームを捨て、新設計の変形トレーリング・リンクに進化する。

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リヤアクスル後方に搭載されるティーポ237エンジンは、ダブル・イグニッションを採用し1289.5ccから147bhpの最高出力を発揮した。

戦闘力を高めた『FIAT ABARTH OT1300』は、1967年シーズンも圧倒的な強さを見せチャンピオンの座をキープした。このほかイタリア国内戦を始めとする各国のレースでも圧倒的な強さを発揮し、1.3ℓクラスの王者に君臨した。

その後レーシング・フィールドから引退した『FIAT ABARTH OT1300』は、ワールド・チャンピオンとなった高い性能に加え、エンスージァストを魅了する美しいスタイリングから、アバルト・ファンのガレージに収まることになる。またこの時代のレーシングGTは公道でも乗れる柔軟性を持つため、当時から愛好家の間では高い評価を得ている。現在もヒストリックカー・イベントの会場で、その美しい姿と豪快な走りを目にすることができる。

▼スペック
1965 FIAT ABARTH OT1300

全長:3830mm
全幅:1620mm
全高:1040mm
ホイールベース:2015mm
車両重量:655kg
エンジン形式:水冷直列4気筒DOHC
総排気量:1289.5cc
最高出力:147hp/8800rpm
変速機:5段マニュアル
タイヤ:F 5.50-13/R 6.00-13
最高速度:245km/h

INFORMATION

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今年も4月29日(祝)に富士スピードウェイにて開催
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