1992 FIAT CINQUECENTO 900 TROFEO|アバルトの歴史を刻んだモデル No.006

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1992 FIAT CINQUECENTO 900 TROFEO
フィアット・チンクエチェント・トロフェオ

ヤングドライバーを育てる入門用マシン

ABA_201602_002ボディサイドにはアバルトのステッカーが誇らしげに貼られる。

レースやラリー等のモータースポーツが盛んなイタリアを始めとするヨーロッパ各国で、ラリーの登竜門として企画されたプログラムが、トロフェオ・チンクエチェント・シリーズ戦である。このトロフェオ・チンクエチェント・シリーズ戦では、レース活動を助けるために毎レースの入賞者と年間チャンピオンに賞金が与えられるシステムとなっていた。

フィアット社がバックアップする若手ドライバー育成を目的とするワンメイク・ラリー・プログラムは1970年代から行われており、『アウトビアンキA112』、『フィアット・ウーノ』、『フィアット・ウーノ・ターボ』が使われ、1993年からは『チンクエチェント・トロフェオ』が使用されることになったのである。

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ダッシュボード上に追加されたタコメーターにもABARTHのロゴが入る。

トロフェオ・チンクエチェント・シリーズの専用マシンとして製作されたのが『フィアット・チンクエチェント・トロフェオ』である。入門用のモデルだけに、競技車両の開発に際して豊富なテクノロジーを持つアバルトを前身とするフィアット・アウト・コルセが担当した。アバルトは以前にも若手ドライバー育成のためのフォーミュラ・アバルトを手掛けており、レースと共に歩んできた熱き血筋を持つからこそ、『チンクエチェント・トロフェオ』の開発を任されたのである。

ABA_201602_004リヤハッチにはチンクエチェントのロゴの上にはABARTHが。

トロフェオ・チンクェチェント・プロジェクトには、ミシュラン(タイヤ)、スピードライン(ホイール)、チャンピオン(スパーク・プラグ)、TRWサベルト(シートベルト)、モモ(ステアリング・ホイール)、ビルシュタイン(ダンパー)、アイバッハ(スプリング)等のサプライヤーが特別価格でパーツを提供し、若者でも買い易い価格へと引き下げられた。そのためトロフェオ・シリーズに参加する車両は、これらのスポンサー・ステッカーを貼ることが条件とされていた。

ABA_201602_005ダッシュボードはノーマルのままだが、ABARTH製のタコメーターが追加され、モモ製のステアリング・ホイールに交換し、TRWサベルト製のバケットシートが組み込まれる。

『フィット・チンクエチェント』(このモデルは”500”ではなく”Cinquecento”と表記される)をベースに、ワンメイク・ラリー規定に適合するモディファイが行われた。しかしサスペンションとブレーキの強化、ロールケージや消化器等の安全装備、そして確かなドライビングをアシストするレザー・ステアリングとフルバケット・シート、そして4点式のシートベルトが組み込まれるが、エンジンのチューニングは免許規定にある最高速度150km/hを超えないように抑えられていた。

『フィアット・チンクエチェント・トロフェオ』はキットパーツで販売される方式で、ノーマルの『フィット・チンクエチェント』に組み込む方式とされていた。お金はないが熱い心を持つ若いドライバーのために、中古の『フィアット・チンクエチェント』にキットパーツを組み込み、安価に競技車両を製作できるように配慮されていた。ちなみにコンプリートカーは、プロモーション用に3台のみが作られている。

ABA_201602_006キャビン内には競技中のアクシデントに備えフルロールケージが組み込まれる。セーフティ・ハーネスは4点式が備わる。

フロントに積まれる水冷4気筒OHV 903ccユニットは、10.2:1まで圧縮比を高め55PSを発揮した。700kgの車重に対しては非力だが、ワンメイク・ラリーなら条件は一緒。トロフェオを速く走らせるためには、限られたパワーを最大限使いきる腕と繊細な走りが必要とされるのだ。

ABA_201602_007パンダにも使われていた903ccユニットは、軽チューンが施され55PSを発揮。エアチャンバーにはしっかりサソリのモチーフが。

エクステリアでは、ノーズには夜間のステージに備え4連の補助灯が追加され、車体一杯に貼られたサプライヤーのステッカーが雰囲気を盛り上げる。軽量化のため不要な装備は取り外され、リヤハッチのロックも取り外しスプリング式のストラップで固定されるという徹底ぶりである。

ABA_201602_008フィアット・チンクエチェント・トロフェオのカタログ。A4判3つ折の6ページ構成。

ドアを開け車内に目を移すと、そこはコンペティション・マシンならではの装備が目を射る。車内一杯に張り巡らされたロールケージとチンクエチェントのロゴが刺繍で入ったスパルコ製フルバケットが闘うクルマであることを物語る。ダッシュボードはノーマルのままだが、パワーをフルに引き出すためにアバルト製の回転計が追加された。

この時期は“ABARTH”という名前は公式には消えていたが、かつてのABARTHの人々の意地から、ボディサイドのストライプと回転計の中にABARTHのエンブレムが描かれていた。細部を見ればホイールのセンターキャップ、ホーンボタンにもサソリのマークが配され、さらにはカタログにもABARTHのエンブレムがしっかりと記されていた。

ABA_201602_009カタログではキットパーツの説明や、レース・プログラム、入賞時の賞金額などが説明される。

こうして送り出された『フィアット・チンクエチェント・トロフェオ』は、地元イタリアを始めドイツやスペインなどでもシリーズ戦がスタート。未来のスター・ドライバーを目指す若者が多数チャレンジし、どのシリーズでも盛況だった。

大成功を収めた『フィアット・チンクエチェント・トロフェオ』は、後年『レジョナル・フィアット・セイチェント・ラリー・チャレンジ』と名を変え、『フィアット・セイチェント・スポルティン・トロフェオ』にその座を譲る。しかし、サソリのDNAは時代を超えて受け継がれ、現在のABARTHの各モデルにも確実に受け継がれているのである。

▼スペック
1993 FIAT CINQUECENTO TROFEO

全長:3,230mm
全幅:1,490mm
全高:1,435mm
ホイールベース:2,200mm
車両重量:700kg
エンジン形式:水冷直列4気筒OHV
総排気量:903cc
最高出力:55PS/6,500rpm
変速機:5段マニュアル
タイヤ:13/53-13
最高速度:未発表

INFORMATION

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