2015年<スーパー耐久シリーズ>最終戦@鈴鹿サーキットレポート

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10月24日(土)、25日(日)にスーパー耐久シリーズ最終戦が三重県鈴鹿サーキットで行われました。全6戦、日本全国を転戦して行われるシリーズも最終戦となり、チームにとっても私にとっても地元の鈴鹿で、今季最高の結果を目指すべくこのレースに挑みました。

ドライバーは引き続き、 Aドライバーに井尻選手、Bドライバーに私(大賀選手)、Cドライバーに大塚選手というメンバーで走ります。前戦岡山で壊れてしまったハイパフォーマンスを発揮したエンジンはこのレースに向けて再度作り直してもらい、耐久性もアップ、更に高速コーナーの多い鈴鹿に対応するためデファレンシャルにも改良を加え、マシンのアップデートを図りました。

金曜日の練習走行ではこのエンジン慣らしと足回りのセッティング作業を行うべくサーキットへ向かいましたが・・・なんと、前日にマシントラブルが発覚したためにまだクルマがサーキットに到着していない!

020トラブルによりテスト走行時間が短くなったが、限られた時間の中でセッティング調整をしていかなければなりません。

原因が特定しづらい箇所であったために時間がかかり、メカニックの必死の作業でやっとこの日最後のテストセッションに間に合うことができました。各部のチェックと3名のドライバーが練習するにはあまりにも短い時間・・・ラップ計測もできないほどしか走れませんでした。トラブルは解消したものの、わずかな時間での走行から井尻選手をはじめ3名のドライバーからのセッティングフィードバックを窪田監督が整理し、土曜日の予選に向けては現状できるかぎりの対応をすることになりました。

迎えた土曜日は30分のフリー走行と予選が行われました。
走行不足をカバーすべく、30分のフリー走行はとても大事な時間になりますが、前日遅くまで作業にあたってくれたチームのおかげでマシンは好調を取り戻し、昨年のタイムを3秒更新!後輪駆動車に有利な鈴鹿サーキットでは順位は厳しいことが予想されはしたものの、前輪駆動のFF車勢では上位のタイムを記録して予選に挑むことになりました。昼から行われた予選では気温もさほど上がらず、ターボ車のABARTHにとっては有利な条件となりました。

まずはAドライバーの井尻選手がコースイン。
岡山のレースではリアタイヤの温まりに苦戦し、フロントタイヤが温まってパフォーマンスを発揮した時にリアタイヤがまだ温まっておらず、 A、Bドライバー共にスピンを喫してしまったことから、今回はコースイン時にフロントとリアタイヤを逆転して装着。そして1周後すぐにピットインして前後正規の位置へ戻すことによって、前後タイヤがピークパフォーマンスを発揮するタイミングを合わせる作戦にしました。逆に20分の予選時間の半分を交換作業に費やされるため、ドライバーはミスが許されない状況になりました。

しかし、この作戦が功を奏し、井尻選手は昨年より4秒速い2分23秒443というタイムをマーク!
全50台のうち21台がひしめく激戦のST-4クラスにおいてこの時点で10番手、 FF勢トップとなりました。

040ピットウォークでファンのためにサインをする井尻選手。

続く Bドライバー予選は私の出番。
井尻選手からのフィードバックとデータから走りのイメージを膨らませてコースイン。
そして同じく前後タイヤの入れ替え作業のためにいったんピットインして再度アタックへ向かいます。エンジンはやはり好調で、更に予選用に使用回転数を上げたことでストレートスピードはクラス最速と言えるほどで、足回りのセッティングも少ない時間の中でエンジニアが合わせこんでくれたこともあり、とても好感触。

今季一番アクセルを踏んでいける最高の状態!
そして記録したタイムは2分23秒627。

0301年間共に戦ったチーム全員で記念撮影。決勝に向けて健闘を誓います。

井尻選手のタイムからは少し落としてしまい、ライバル車はタイムを伸ばしてきたこともあって順位を下げてしまったことは悔しいものの、少ない走行時間から自分の最大限のアジャストをして走ることができたため、力を出せた良い予選とすることができました。Cドライバー予選では大塚選手もしっかりと走り切り、決勝に向けては3名のドライバーが準備万端の状態とすることができました。

【予選結果】
Aドライバー 井尻 薫 2分23秒443
Bドライバー 大賀 裕介 2分23秒627
A B合算予選結果 ST-4 クラス 14番手(21台中)
Cドライバー 大塚 隆一郎 2分24秒165

045いよいよレーススタート!ポジション争いは熾烈を極めます。

決勝日も天候は晴れ。
気温も低く、またしてもABARTHにとっては有利な条件に気合が入りました。
予選こそクラス14番手となりましたが、決勝日朝のフリー走行でも感触は良く、ここまで中古タイヤでの走行も周りに比べて好調で、3時間の決勝での長丁場には自信がありました。ピットウォークでは地元ということでたくさんの方が応援に駆けつけてくださり、スタンドには横断幕も…絶対に良い結果を出すぞ!と更に気持ちが入りました。作戦はスタートを井尻選手が担当し、2番手に大塚選手、最後にチェッカーを受ける役目を私が担当することになりました。

13時に決勝がスタート。
混戦の中をベテランの井尻選手がしっかりと順位を上げながら走行していきます。
無線からの情報でもクルマは調子が良く、ペース的にも上位に食い込むことができているようで、10 〜 9番手までポジションアップ。40分経過した頃、接触事故からコース上に破片が散らばったためにセーフティーカーが導入されましたが、私たちは燃費とタイヤライフを考慮してそのまま周回をかさねます。

050スタートから井尻選手の追い上げによって大きくポジションアップ。

レース再開後またしてもクラッシュが発生してセーフティーカーが導入され、レースはやはり最終戦ということで各チーム勝負をかけてきていることからも荒れた展開となっていきました。ここでもピットには入らないとチームは決断し、レースが再開された1時間20分の時点でなんとST-4 クラストップに躍り出ました。

そのままトップを数周キープした後、ピットインを行い大塚選手へ交代。
この交代後、通常の作戦通りだと大塚選手が30分ほどを走行する予定でしたが、チームは奇策に出ます。
「すぐ大賀に交代するから準備して!」
ピットアウト後の位置関係から混戦の中で走るタイムロスを考慮し、大塚選手がピットアウトした周ですぐにピットイン、そして私に交代することでルール上義務となっている2回のドライバー交代を完了し、残りの1時間半を走り切るという作戦です。

0603名のドライバーでバトンをつなぎ、ゴールを目指します。

私に任された役目は1時間半を空いたスペースで思い切り走って順位を上げること・・・責任感でプレッシャーも感じましたが、チームから信頼して任された仕事をしっかりとこなすべく集中しました。ところが・・・いざ交代のためにピットインしてきたマシンは白煙をあげています。

このアウトインのわずか1周の間に他車と接触し、タイヤとバンパーが干渉していたのです。ここはメカニックに任せてマシンに乗り込み、修復作業を終えてピットアウト。コースインして走行していくと接触の影響か、ずっと悩まされてきたタイヤカスの影響か、リアのタイヤグリップが不安定に感じ、なかなかペースが上がりません。

070右リアの修復が痛々しいマシン。

我慢の走りになってしましますが、完走に向けてできるかぎりの走りを続けます。
周りはやはり荒れに荒れ、目の前で発生したクラッシュの影響で3度目のセーフティーカーが導入。
と、ここで私たちにとっても最後の試練が…フロントの足回りが突然破損し、セーフティーカー先導のペースにすらついていけない!無線で状況を告げ緊急ピットインし、修復作業にあたってもらいます。

上位入賞も見えていただけにショックが大きかったですが、とにかく最後のレースを完走しなければ・・・。メカニックは素早く作業してくれましたが、私にとってはとても長い時間に感じました。
修復されたマシンで再びコースインし、残りの数周を走り切り…今年最後のレースを12位完走で終えることになりました。

【決勝結果】
ST-4 クラス 12位(21台中)

0801年間応援ありがとうございました!来年に向けて・・・。

今シーズン最後のレースにチーム全員が気持ちを入れて挑みましたが、結果としては悔しいものになりました。シーズンを通してマシンには次々と改良がなされ、結果を十分狙えるポテンシャルを発揮するところまできていただけに、あと一歩かみ合わないレースが続いたことには反省が多く感じます。

しかし、個人的には結果以上に得るものが多いシーズンとなりました。フォーミュラーカーからツーリングカーに乗り換え、まだまだ走り方もセッティングもわからない中、マシンを仕上げていく過程、ベテラン選手と組んだことで走り方もレースへのアプローチの仕方も多くを学ぶことができました。

結果を出せなかった弱さの部分をもっと向上させる努力を続け、この経験を生かせるよう、来シーズンに向けてチーム一丸となって取り組んでいきます。応援頂きましたABARTHファンの皆様へは、結果が出せていない中でも変わらぬ応援をいただきありがとうございました!ABARTHオーナーさんが応援に駆けつけてくださったり、かわいい見た目のマシンを本当に多くの方に見ていただくことができ、嬉しく思っています。来年もこのABARTHを日本のメジャーレースでの表彰台獲得へ~という挑戦をまた応援いただけますよう、よろしくお願いいたします。

INFORMATION

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嶋田智之さんによる『ABARTH 695 BIPOSTO』レポートはこちらから
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Text:ムゼオ チンクエチェント レーシングチーム ドライバー:大賀裕介