ABARTH 500ドライビング・レッスン Vol.2

前回はタイムアタックを一周ノーカットで紹介したが、今回は桂伸一選手がどのようにコースを攻略していったかをお伝えする。

ペースをあげて全開走行だが、まだタイムアタック前。

ギアの選択やライン取りなど、適正なポイントを探っている。この映像では足元にもカメラを設置してペダル操作もわかるようにしているので、ブレーキの踏み始めや戻すタイミング、アクセルの踏み込み方、ヒール&トーなどを参考にしていただきたい。ただし、申し訳ないことにメインカメラの設置が少々甘く、画像がブレているところがあることをお断りしておきたい。

ポイントの一つはアクセルワーク。

一般的にはコーナー立ち上がりのアクセルオンは、徐々に開いていくイメージだが、桂伸一選手はあえてスパッと開けている。これはハイパワーかつ比較的パワーの盛り上がりが急激なFFであるアバルト500の特性に合わせたものであり、負担のかかりやすいフロントタイヤを労る効果を狙ってのことだ。
タイヤのグリップ力のうち、縦方向と横方向を探りながら走るのではなく、コーナーリングがほぼ完了して横方向のグリップが必要なくなってきてからアクセルを踏みこむイメージ。十分にクルマの向きがかわってステアリングを直進状態に戻していってから、一気に強力な縦方向のグリップを使うのだ。

向きが変わっていないうちにアクセルをスパッと踏みこんでしまうと、当然のことながらアンダーステアになって外側にはらんでいってしまうので注意されたい。

もう一つのポイントは高めのギア選択。

Vol.2 Part1では小さなコーナーで2速を使っているが、Vol.1 Part3のタイムアタックでは3速になっている。瞬間的な立ち上がりは2速のほうが速いかもしれないが、すぐに吹けきってしまってシフトアップすることになるのがもったいない。クラッチを切ってシフトアップしている時間も無駄であるし、アバルト500はターボ車なのでシフトアップ直後はブーストがかかるまで少し時間がかかってしまう。

それよりも、最初から3速でアクセルを踏みこんでいればずっとブーストがかかるのでトータルでは速くなるのだ。

ターボと上手く付き合うこともアバルト500のスポーツドライビングでは重要な要素となる。体感的に速いからといって、低いギアを多用しているとラップタイムを落とすことがあるのを知っておこう。

Vol.2 Part2はタイムアタック前の周、Vol.2 Part3はタイムアタック後の周を収録している。ここでもタメになるコメントが聞けるので参考にしていただきたい。

桂伸一 
モータージャーナリストとして活動しながら、レーシングドライバーとしても輝かしい経歴をもつ桂伸一選手。かつてはグループAやスーパー耐久など国内のツーリングカー選手権をメインに参戦し数々のタイトルを獲得している。最近はニュルブルクリンク24時間レースへの挑戦が続いており、今年もアストンマーチンからワークスドライバーとして招聘された。

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