痛快にして爽快。アバルト595Cツーリズモ試乗レポート

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アバルト595シリーズの中から1台を選び出すのはなかなか難しい。グレードにより個性が異なり、それぞれが惹き付けるポイントを持つからだ。そんななかモータージャーナリストの岡本幸一郎氏は、「マイ・ベストは595Cツーリズモ!」という。その理由をワインディングロードからお届けする。

元気な走りと抜群の開放感

アバルト595シリーズの中で、個人的にはこの「595Cツーリズモ」こそマイ・ベスト・アバルト595だと思っている。それは、移動を快適にこなすツーリズモとしてのパフォーマンスとエレガンスさを兼ね備えている上に、オープンエアドライブの楽しさまでも併せ持っているからだ。

このシリーズ唯一となるカブリオレは、すべてのピラーを残し、ルーフ前端からリアウインドウまでを開閉できる、往年のチンクエチェントと同じスタイルを採用している。すなわちボディ骨格はクローズドモデルと同じなので、ボディ剛性や横転時の安全性も十分に確保されている。また補強の必要がない構造のため、車両重量の増加が小さく抑えられていることもメリットに挙げられる。

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2017年2月に実施されたマイナーチェンジ後の595Cツーリズモ。外観では前後バンパーが一新され、安全性を高めるLEDデイライトが追加された。また17インチホイールのデザインも新しくなった。

さらに、一般的なオープンカーでは走行中にトップを開閉するには車速等の制約があるものが多いが、595Cツーリズモは走行風の影響を受けない機構のおかげで走りながら自由にスライドさせることができるのが特徴。ソフトトップはボタンを押して任意の位置で止めることができる。押し続けるといったん後部座席の頭上まで開いて止まり、さらに押すとソフトトップが全開までスライドして最後端で畳まれるという仕組みとなっている。まさしくいいことづくめで、爽快なオープンエアドライブを満喫できながらも、オープントップ化にともなうデメリットを感じさせないところがうれしい。

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屋根を全開にすると開放感は抜群。その場所の空気を感じながら、気持ちのいいドライブが楽しめる。

走りが595らしく元気なことも、このクルマの魅力。コンパクトで軽量な車体と引き締まった足まわり、それに最新版では165psを発生する1.4リッター直列4気筒ターボエンジンの組み合わせは、痛快そのもの。ちょっと野太いエキゾーストサウンドから期待するとおりの瞬発力ある力強い加速フィールがこのクルマの持ち味だ。

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595Cツーリズモでは、エンジンの最高出力が160psから165psへと引き上げられた。

名門KONIのダンパーが携わったサスペンションは、タイヤを路面に押し付けるかのようなロードホールディング性能を発揮する。アバルト595シリーズのパッケージング面における特徴として、ホイールベースが短くて車高が高めなことが挙げられるが、おかげで小さなアクションでもクルマが機敏に反応し、自らの手でクルマを操っている感覚が強い。それもこのクルマをドライブする楽しさのひとつ。ハンドリングもまた痛快な味付けだ。

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ところで595Cツーリズモに限らず、ふだんから街を走るアバルト595を見かけると、思わず目が引き寄せられてしまうように感じるのは、小さいながら遠目にも存在感があるからだろう。とくに冷却性能の向上のためエアインテークが拡大したマイナーチェンジ後のルックスは、より印象深いものとなったように思える。595Cツーリズモの場合、ソフトトップを開けても閉じても、とても絵になるところもうれしい。

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ルーフを全開にした状態。折り畳まれた幌のおかげでリアビューもスタイリッシュ。

よく「オープンカーはインテリアもエクステリアの一部」などといわれるが、595Cツーリズモもまさしくそう。もともと小洒落た雰囲気に、スポーティな形状のシートやステアリングホイール、パフォーマンスの高さを強調するかのようなブーストメーターなど、心くすぐるアイテムの数々が与えられたインテリアは、周囲に見せたくなってしまう。


595Cツーリズモのインテリア。スポーティな形状のシートをはじめ、凝った形状のステアリングホイールやブーストメーターなどドライビングへの意識を高めるアイテムが備わる。

そんなわけで筆者は、アバルト595を買うなら595Cツーリズモが本命だと思っている。何から何まで特別感に満ちている595Cツーリズモ。このクルマに乗るときはいつだって心躍る思いである。

Koichiro Okamoto_Prof

岡本幸一郎
自動車メディアの制作・編集者を経て、1996年にフリーランスのモータージャーナリストに。自動車専門誌やウェブサイトに寄稿するほか、制作・プロデュースも手がける。趣味はギター演奏。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。