『レコードモンツァ』実装インプレッション。マフラー装着前後で音の違いを検証!

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皆さんもよく御存知のとおり、ABARTHはドライバーを興奮のるつぼへと気持ちよーく叩き込んでくれるような、痛快なパフォーマンスとテイストを身上としたクルマです。当然ながら、その持ち味をもっともっと膨らませたいという人も少なからずいらっしゃるわけで、ABARTHは自動車メーカーとして、そうした熱いユーザーに向けてのチューニング・パーツ、ドレスアップ・パーツをたくさん用意しています。

それこそエンジンのパワーそのものをグッと増幅させるキット、ハンドリングと限界領域のパフォーマンスを高めるためのサスペンション・キット、サーキットでも通用する強力なストッピング・パワーを得るためのブレーキ・キット、軽量化とホールド性を同時に得られるスポーツ・シート──といった具合に、走りの質を大きく高めるためのスペシャル・パーツが多数。これほどまでに“走り”を磨くためのオプショナル・パーツをズラッと用意してくれている自動車メーカーというのは、他にはちょっと見当たりません。

このSCORPION MAGAZINEでは、以前にその中から『esseesse Bremboキット』という高性能ブレーキ・システムとアロイ・ホイール+タイヤからなるキット・オプションを、実際に『ABARTH 595 Competizione(コンペティツィオーネ)』に装着してレポートしましたが、今回はもうひとつの装着率の高いパーツをピックアップし、実装レポートいたします。

それは、『レコードモンツァ(RECORD MONZA)』。いわゆるスポーツ・マフラーです。

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ABARTHの歴史はマフラーの歴史

マニアックなABARTHのファンの方なら先刻御承知でしょうが、ABARTHのヒストリーを語るうえで、エキゾースト・システム=マフラーの話題を避けて通ることはできません。

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アバルト社は1949年にカルロ・アバルトによって設立されましたが、当初は自動車メーカーではなく、レーシング・チームであり、レーシング・ファクトリーでした。が、レースにチームとして参戦するのに高額な費用がかかるのは、今も昔も同じこと。そこでカルロ・アバルトが、レースのための資金を得るためにFIATの量産モデル用のチューニング・パーツを開発、設立からほどなくして販売を開始したのです。

その主力商品であり、後にアバルトの屋台骨を支えたのが、エキゾースト・システムでした。『マルミッタ・アバルト(=アバルトのマフラー)』は、フリーフロー・システムという排気の流れを極めてスムーズにする構造を持ち、装着したクルマはノーマルの同型車と較べて格段に速くなった、という証言が幾つも残されています。だからこそ、爆発的といえるほどの人気商品になったのですね。カルロ・アバルトはレーシング・エンジニアあると同時に、稀代のチューナーだったのです。

070226_AB_FiatMultiplaPubblicitaマフラーを運ぶための商用車たち

そうした歴史をバックボーンに持つ現代のABARTHですから、スペシャル・マフラーに込めた想いには並ならぬものがあったのでしょう。現代版の『マルミッタ・アバルト』には、『レコードモンツァ』という、これまた歴史的なネーミングが冠されています。

『レコードモンツァ』とは、もともとは1958年にデビューしたアバルト製レーシングカーに与えられた愛称です。古くからのエンスージャストの間では“レコルド・モンツァ”とイタリア語読みで呼ばれることも多いですね。1950〜60年代のヨーロッパの自動車界では、サーキットを舞台にしたスピード記録へのチャレンジが盛んに行われていました。そこで速さを見せることによって、自分達の技術力をアピールしていたわけですね。アバルトは1956年以降、モンツァ・サーキットで次々と世界記録を塗り替える活躍を見せ、『レコードモンツァ』という愛称はそれにちなんだもの。アバルトにとっては大切なヘリテイジなのです

070226_AB_FiatAbarth750初めてモンツァの記録を達成したベルトーネ製レコードカーとドライバー陣

見た目も美しい現代版『マルミッタ・アバルト』

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さて、『レコードモンツァ』は、『ABARTH 595 Competizione』には標準で備わっていますが、500、500C、595 TURISMO(ツーリズモ)、595C TURISMOではオプション設定とされています。また適合車種であれば、新車購入時でなくともディーラーで後付けをオーダーすることができます。もちろん車検対応型です。

このマフラーの特徴は、排気の出口が2系統となっていること。エンジンからターボチャージャーと触媒を経由してきた排気パイプは、まず3つに枝分かれし、ひとつはサイレンサーへ、残りのふたつはそのままマフラー・エンドの外側2本へと向かいます。

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その3つに枝分かれする部分には2ウェイ・バルブが備わっていて、背圧が高くなる──具体的には3000rpm以上の高負荷状態──とバルブが開くという可変式。つまり負荷が低い状態ではサイレンサーを経由した内側の2本の出口だけで排気を放出し、負荷が高くなると外側2本のストレート・パイプにも排気が流れていく、という仕組みです。

何ゆえそんな面倒くさい構造にしたかといえば、排気の効率を考えているのはもちろんですが、あまり回転を上げないでゆっくり走るときにはノーマル・マフラーとほとんど変わらない音量をキープして、ガンガン回して走るようなときには弾けるような気持ちいいサウンドでドライバーにもっともっと刺激を与えたい、というアバルトの親心(?)。

また実際に『esseesseキット』を備えたクルマ──つまり500と500Cにオプションで組み込んだクルマと595──では、2000rpm以上の回転域でパワーが5.1psほど、トルクが1.5kgmほどアップし、『esseesseキット』を備えていないクルマも含めて中速域でのレスポンスを向上させる効果があると謳われています。

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ルックス的にもサイレンサーが黒の結晶塗装にサソリ印がハッキリと刻まれていて、装着すると2×2の4本のテール・パイプ以外が隠れてしまうというのがちょっともったいなく感じられる、美しい仕上げです。価格は単体で16万2000円。日本のアフターマーケットの日本車用マフラーにもっと高価なものもあることを考えると、イタリア製、それもメーカー自身がリリースしているものとしてはリーズナブルといえるでしょうね。

1時間たらずでニンマリできるサウンドに

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『レコードモンツァ』の取り付けは、ブレーキ・キットの装着に引き続き、アバルト横浜町田さんにお願いしました。車両は『ABARTH 500』の2ペダル仕様、『esseesseキット』の備わっていないモデルです。

作業工程は、車体をリフトで持ち上げてノーマルのマフラーを外し、『レコードモンツァ』を取り付け、車体を降ろす、といった流れ。言葉にしてしまえばとても簡単なように感じられるかも知れませんが、クルマというのは構造そのものがシンプルにできているわけではありません。またノーマルのマフラーも簡単にスポッと抜けるわけではなく、コツと技術が必要ですし、マフラーそのものを他のパーツに干渉させることなく外したり装着したりしなければなりません。アバルト横浜町田のプロフェッショナルは、今回は40分たらずで作業を完了させてくださいましたが、まぁ1時間くらいの時間はみておくべきでしょう。

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待ち時間を利用して、アバルト横浜町田のTECマエストロ、山崎圭介工場長に少しだけお話をうかがってみました。

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「フツーのクルマと違ってABARTHは特殊で、クルマ全体が運転を楽しむために作られています。そこにマフラーを換えてサウンドがさらに気持ちよくなると、気分が盛り上がって、その楽しみももっと大きくなりますよね。そういう意味では、『レコードモンツァ』を装着する方がよりアバルトらしいクルマになる、ともいえますね。『レコードモンツァ』は好評で、新車の購入時にオーダーされる方もユーズドカーに後から取り付ける方もいらっしゃいますが、おそらく皆さんが想像している以上に装着される方は多いです。私達もなるべくデモカーに装着車を常に用意するように心掛けて、サウンドやフィールを感じていただけるようにしていますので、ぜひ体感していただきたいですね」

ちなみにアバルト横浜町田では、マフラーの交換工賃は1万円。置き場に困る外したノーマル・マフラーも、無料で引き取ってくださるとのことです。

エンジンをかけた瞬間に「あ、これは違うな……」

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さて、『ABARTH 500』へのレコードモンツァ装着作業が終了しました。気になるのは、まずはノーマルとのサウンドの違いです。SCORPION MAGAZINEでは読者の皆さんにもその違いを少しでも味わっていただきたく、ノーマルの状態と装着後の状態の動画を撮影してきました。上がノーマルの状態、下がレコードモンツァ装着後、です。

いかがでしょう?サウンド、変わっていますよね?エンジンの回転数は、あまり負担をかけたくないので、どちらも瞬間的に3500rpmあたりまで、に留めました。もともとアバルト500はエンジンの排気量を考えれば充分に迫力のあるサウンドを聴かせてくれるわけですが、『レコードモンツァ』はちょっとばかり凄味すら感じさせる弾け具合。その猛々しさは大きな魅力、説得力です。

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実際に走らせてみても、得られる加速力やスピードが大幅に上がったという感覚こそありませんが、サウンドが雄々しさを増した効果は大きく、知らず知らず気分が盛り上がります。これはもう1.4リッターという小排気量のクルマを走らせてるような感覚ではありません。

それじゃ気分だけなのか?というと実はそうでもなく、あらかじめ記したとおり今回の装着車両には『esseesseキット』は備わっていないのですが、それでも若干力強さを増したようにも感じられたのでした。おそらくそれは3000rpm付近から上の領域でエンジンのツキが良くなったというか、その辺りからの吹け上がりが軽さを増したというか、そうしたフィーリングの違いによるところが大きいのかも知れません。

それでサーキットのラップ・タイムがコンマ1秒短縮できるというような類ではありませんが、ABARTHのドライバーだったら最も多用するであろう領域でのこの変化には、ちょっと見逃せないものがあると思います。もちろんいうまでもなく駆る楽しさや気持ちよさは大幅に増幅されていて、僕ならエクストラ・コストを支払ってでも『レコードモンツァ』を選ぶだろうな、と強く感じたことも付け加えておきます。

やっぱりアバルトは、こうじゃなきゃ!

 
 

取材協力
アバルト横浜町田
>> http://yokohama-machida.fgaj-dealer.jp/abarth/

『esseesse Bremboキット』実装テストの様子はこちら
>> https://www.abarth.jp/scorpion/scorpion-plus/4916

INFORMATION

★『ABARTH 695 biposto 』がお目見え
>> https://www.abarth.jp/695biposto/

嶋田智之さんによる『ABARTH 695 biposto』レポートはこちらから
>> https://www.abarth.jp/scorpion/driving_fun_school/4862

★<695 BIPOSTO CARAVAN>が開催中!
『ABARTH 695 BIPOSTO 』が、8月以降も順次、全国のショールームに登場。
>> https://www.abarth.jp/bipostocaravan/

★安心と刺激に満ちたカーライフを。
2015年7月1日以降にABARTH各車を成約かつ登録した場合、メンテナンスプログラム『Easy CARE』を0円でご提供!
>> https://www.abarth.jp/offer/

Text:嶋田智之
Photos&Movie:YosukeKAMIYAMA