モータージャーナリスト、嶋田智之さんスペシャルインタビュー

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若葉が目にまぶしい季節を迎え、いよいよ“スコーピオン”も疼きはじめた。ABARTH(アバルト)で日本のモータースポーツにかつてない刺激を与えているムゼオ チンクエチェント レーシングチームは、4月10日~12日に開幕した全日本ラリー選手権で見事に初戦クラス優勝を果たした。また4月29日には、ABARTHオーナーが集う恒例の『ABARTH DRIVING ACADEMY』を富士スピードウエイで開催する。

躍動感みなぎるABARTHの活動をさらに加速させるべく、クルマを愛してやまないモータージャーナリスト、嶋田智之さんをゲストに招きABARTHスペシャルインタビューを実施!嶋田さんは、熱狂的なファンを生んだ自動車専門誌『Tipo』の編集長や『ROSSO』の総編集長をつとめた人物。2014年11月のSCORPION MAGAZINEでは、ムッシュかまやつさんとABARTH対談を行い、同年同月に東京・代官山で開催されたABARTHブランドの祭典<SCORPION DAY>ではトークショーに出演。
ABARTHとも縁の深い嶋田さんによる、“男の心に棲む少年目線”で語るABARTHの魅力とは?

――まず単刀直入にうかがいます。
ABARTHという単語を聞いて真っ先に浮かぶイメージは?

嶋田 熱さ、でしょうか。元々がレース屋さんで、世界中のモータースポーツで記録にあるだけで7400勝以上しているというようなヒストリーもすぐに思い出すんだけど、まずはとにかく熱い。それもピリ辛からゲキ辛まで多種多彩。

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これはもうアクセル踏みたくなるでしょう。
実際、踏んじゃいましたけどね(笑)

――初めて触れたABARTHは?
嶋田 80年代後半のA112 ABARTHとリトモABARTH 130TCです。実際に乗るまではちょっと扱いにくいんじゃないかと思っていたんです。というのも、もっと若い頃にチューニングカー専門誌に携わっていたことがあって、その手のクルマには、当時はチューニングが高くてかなり速くなってるんだけど乗りにくいっていうものが多かったんです。ところがABARTHは驚くほど乗りやすかった。理に適ってるな、と思いました。

――その理とは?
嶋田 たとえばどんなにパワーがあっても、その出方がピーキーなら運転はその分だけむずかしくなる。クルマに合わせてあげなきゃ速く走れないのだから、そこにも神経を使わなきゃならないし、そうするとドライバーは疲れやすい。逆に低回転域から高回転域まで満遍なくパワーが出ていたら、ドライバーにとっては扱いやすいし、クルマに合わせることを考えないですむから疲労も少ないし、どこからでもパワーを引き出せるわけだからより速く走らせやすい。例えば今どきのレーシングカーなんて、めちゃくちゃ扱いやすいですよ。扱いにくいクルマだと絶対に勝てないから。もちろんABARTHだってチューニングは高いんです。パワーだってベースになったクルマよりずいぶん上がってる。けれど無理矢理パワーを上げてるようなところはないんです。だから意外だったけど、僕が初めて乗った2台のABARTHは、ちっとも乗りづらくなんかなかった。そのくせエンジンの吹け上がりが素晴らしかったんですよ。これはもうアクセル踏みたくなるだろうって感じです。実際、踏んじゃいましたけどね(笑)。そう、その後にハンドルを握る機会を得た古いABARTH、750GTザガートとか595SSとかも、概して似たようなフィーリングでした。きっとその辺りにフィロソフィがあるんだろうって実感しましたね。

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――話題をイタリア車全体に広げます。
昨今の自動車メーカーはグローバル化に伴い、以前のような国籍別の個性を失いつつあるように思います。最近のイタリア車はどうですか?

嶋田 おっしゃる通りですね。今はイタリア車と言えどもイタリア人だけがデザインしたり開発したりする時代ではありません。ABARTHが属するFCAも、フィアットとクライスラーという国籍が異なる自動車メーカーが母体となったグループです。いろんな国からスタッフが集まっています。そうしたグローバル化で、まず全体的なクルマのクオリティが上がりました。実際のところ、昔のイタリア車はカッコいいけれどよく壊れたっていうのは嘘じゃなかったですからね(笑)。ただ、メーカーは否定するかもしれませんが、イタリア車は多少機能を犠牲にしてもデザインだとか楽しさだとかを優先させるところは今もあります。ドイツ車は逆。まず、きっちりと機能。日本車はコストとバリューのバランス。そうした国別の個性は今も残っていると思いますよ。例えばデザインが美しいかどうかっていうことは個々の感性に左右されるでしょうけど、イタリア車にはどこか華があって目が惹き付けられちゃうようなところってあるでしょう? それに何てことのない実用車でも、走らせると何だか無性に楽しかったりもする。古いイタリア車好きの中には新しいのは薄味になったと嘆く人もいるけど、僕はそれでも新しいイタリア車はイタリア車であることを全く捨ててないな、と思います。

――現在の ABARTH はいかがですか?
嶋田 時代がどんなに変化しようと、大切なものは全く変わってないな、と感じます。大切なものとは、走らせてみたときのおもしろさです。それはチューニングブランドの生命線と言っていいでしょうね。少し主旨からはずれるかもしれませんが、トラクションコントロール系などの電子デバイスの介入がとても自然なんですよ。僕らは仕事柄わざとクルマを無茶な姿勢に持ち込んで試してみたりもしますが、ABARTHのデバイスはお仕置きみたいな効き方をしません。

――お仕置きですか?
嶋田 あるんですよ。介入したことが露骨に判って、一度介入しちゃうとなかなか解けずに加速したいのにできない、みたいなクルマが。でもABARTHは違います。おそらく僕らが感じ取れない初期領域から電子デバイスはこっそりと効き始めていて、介入しても余程のことがない限り走る楽しさを邪魔しない。ドライバーのミスをカバーするだけじゃなくて、楽しませるための電子デバイスっていう側面もあるんです。その“楽しませるため”というのはもっと根本的な部分からそうで、例えばステアリングを切った瞬間にリアタイヤも反応して全身で曲がろうとしてるような感覚がある。時代が変われば安全面や環境面を含めて求められるものも変わるけど、そういうドライビングのおもしろさだとかABARTHならではの個性みたいなものを、あの手この手でしっかり継承してるように感じます。

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――現在のABARTHはFIAT 500をベースにしたモデルのみですが、これについてはいかがですか?
嶋田 ABARTHを存分に楽しむという点において十分なラインナップだと思います。ABARTH 500って、クルマ好きの“男の子”な気持ちがクルマに求めるものは全部詰まっていますからね。小さな万能型スポーツカーですよ。

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――ラインナップの中から何か1台選ぶとしたら?
嶋田 ついこの前3日間ほど595 COMPETIZIONEの左ハンドル・MT仕様に乗ったんですけど、これがメチャクチャおもしろかった! 時代的には効率的な面からいっても2ペダル、つまりATモード付シーケンシャルトランスミッションだということは理解しているんだけど、スポーティなエンジンをマニュアルシフトで操る楽しさは格別ですからね。このMT瀕死状態の世の中でMT車を用意してくれているだけでもABARTHに感謝です。ベーシックなABARTH 500にもMT仕様があるから、クルマ好きにはぜひ試してほしい。その反面、ルーフが大きく開く595Cを選んで2ペダルで流して走ったりするのもいいよな、なんて思うわけで。FIAT 500ベースの中から1台を決めるのも大変。ラインナップ、充実しすぎですよ。僕に限らず誰もが、自分に合ったABARTHを見つけるしかないでしょうね。

僕らがとやかく言うまでもなく ABARTHは必ず何かをやってくれる!

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――今後のABARTHに期待することは?
嶋田 まずは今度の冬までには日本に上陸するであろう695 Bipostが楽しみですね。すでに本国のテストコースで試乗してきたんですけど、原稿ABARTH最強の190psというスペックながら決してピーキーじゃなくて、低めの回転域からしっかりトルクが出るから扱いやすくて速い。ほとんどレース仕様を公道も走れるようにしたみたいなクルマでリアシートも取っ払われちゃってますけど、そういうクルマを普通にラインナップに加えるところがABARTHらしい。

――そういうニュースは滅多に聞けなくなりましたね。
嶋田 それから、マツダ製のプラットフォームを利用して作るFIAT 124スパイダー登場の噂。そのABARTH版が出たら楽しいでしょうね。もし実現すれば、70年代にラリー界を席巻した124 ABARTHラリーの再来みたいなものでしょ。それはワクワクしますよ。FRのABARTHですしね。

――嶋田さん、本当にうれしそうですね。
嶋田 自然とそういう気持ちにさせてくれるのがABARTHなのかも知れないですね。現在のABARTHには、フェラーリやマセラティから来たエンジニアだとか、モータースポーツの世界から来たスタッフだとかもたくさんいるんですよ。そういう走る楽しさや気持ちよさ、スピードの世界はどういうものかみたいなことを知ってる人達が、ABARTHで何をすべきか本気で考えている。その発想や技術力がひとつの方向に集約したときのパワーに心から期待しちゃいますね。……というか、僕らがとやかく言うまでもなく、彼らは必ず何かをやってくれるのでしょうけれど。

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嶋田智之さんによる< MAKE YOUR SCORPION >

今回嶋田さんが完成させたのはこちらのデザイン。

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「この595コンペティツィオーネ“自分スペシャル”の基本テーマは、近頃のマイブームである「控え目」「地味」「奥ゆかしさ」。(笑)ホントは595Cを選びたかったんですけど、マニュアルトランスミッションの設定がないので諦めました。左ハンドルを選んだのは、先日乗ってみたときに自分にシックリ来たので。本気を出すとMTを駆使してビュンビュン行ける、誰よりも速いかどうかはウデ次第……という辺りに、オヤジならではのちっちゃい自信と大きな願望が詰まってると思います。」

選択車種:ABARTH 595 COMPETIZIONE 5速マニュアル
カスタマイズ詳細
ボディーカラー:カーキ(メタリック)
シートカラー:ブラウン

追加アクセサリー
ミラーカバー:ベージュ(スペシャルソリッド)
esseesse Bremboキット:ブラック

★自分だけのサソリをつくれ。 好評のカスタマイズ・プログラムが、牡牛座の期間にも登場。自分だけの 595 シリーズを手にするなら、 今。
>> http://www.abarth.jp/config/

INFORMATION

★ABARTH DRIVING ACADEMY @オートポリス
4/29 に富士スピードウェイにて開催される ABARTH 専用スポーツ&セーフティドライビングレッスン。
次回開催地、オートポリスの応募が始まりました。
受付期間:4/15〜5/23
>> http://www.abarth.jp/drivingprogram/drivingacademy/

Edit & Text: TONAO TAMURA
Photos:Masato Yokoyama