秋の行楽シーズン到来 これからの時期、オープンカーが気持ちいい

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オープンカーというと夏のイメージがあるけれど、じつは本当に気持ちいいのは秋。そう、これからのシーズンだ。そこで今回は、アバルトのコンパクトオープン『595C ツーリズモ』で、季節の風や匂いを味わいにドライブに出た。

街との距離がぐっと近くなる

オープンカーにふさわしい季節はいつか? いろいろな意見があるだろうけれど、個人的には秋から初冬がベストだと思っている。やけどをするほど陽射しは強くなく、台風さえやりすごせば風は爽やか。ちょっと肌寒い日でも空調を効かせれば、“頭寒足熱”の快適な環境をつくりだせる。
今回はオープンカーのベストシーズンを先取りして、『595C ツーリズモ』をオープンエアドライブに連れ出してみた。

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せっかくのオープンモデルということで、都内をスタートする瞬間から屋根を開ける。『595C ツーリズモ』の幌はスイッチ操作で開け閉めする電動タイプだから、操作は簡単。あっという間に青空が手に入った。

都心部で屋根を開けて楽しいのかと、疑問に思われるかもしれない。でもこれが楽しい。信号待ちで空を見上げれば、通りを歩く人の笑い声や自転車がブレーキをかける音、カレー屋さんのスパイスの匂いやキンモクセイの香りが室内に飛び込んでくる。運転している自分と街の距離がぐっと近く感じられるのが、オープンカーの魅力のひとつ。

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『595C ツーリズモ』がデザイン的に目立つモデルだということもあって、かなりの視線を浴びる。正直なところ、最初は見られることが恥ずかしかった。でも、通りがかった初老の白人男性がにっこり笑いながら親指を突き出してサムアップのポーズで親しみを表現してくれた時、恥ずかしがっていてはダメだと悟った。オープンカーは屋根だけでなく、心もオープンにして楽しむ乗り物なのだ。

実は都内での撮影中に、何度か通り雨にやられた。でも、心配はご無用。『595C ツーリズモ』の屋根は、60km/hまでのスピードなら走行中でも開閉できるのだ。雨粒が来た! と思った瞬間にスイッチに手を伸ばせばいい。これは便利な仕組みだ。おかげで、濡れることなく撮影を行うことができた。

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高速道路では雨に遭遇。屋根を閉めた状態での騒音は低く、幌がバタつくこともないので、ハッチバックと快適性での差はほとんどない。

排気音が気持ちいい

どこへ行こうか思案した結果、レインボーブリッジを渡って千葉の海を目指すことにした。今はもう秋、だれもいない海だ。レインボーブリッジの上は風が吹いていることが多いけれど、首都高速程度のスピードであれば、屋根を開けて走っても風は気にならない。自慢ではないけれど、筆者は日本の成人男性の平均よりかなり座高が高いと思われる。それでも頭頂部をさわさわと風が撫でていく程度で、風を不快に感じることはない。風の流れが、上手にコントロールされている。

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風の巻き込みは少ないので長い髪でもひどく乱れることはなさそう。

レインボーブリッジでアクセルペダルを軽く踏み込むのが楽しいのは、アバルトらしい乾いたヌケのいい排気音がダイレクトに聞こえることだ。排気音が風の音と混ざり合って、室内を満たす。これは気持ちがいい。

試しに「SPORT」スイッチを押すと、エンジン回転数がポンと上がって音量も増す。排気音が聞きたくて、ステアリングに備わるオーディオコントローラーでラジオの音量を下げる。これならカーオーディオは要らないかも、と思いつつ、アバルトの排気音とデュエットする音楽を探してみたいとも思う。もうひとつ、オプションのマフラー「レコード モンツァ」を試してみたいとも思った。

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ルーフの枠は残るものの、開口部が広いから開放感が得られる。

直線が続く高速道路でも退屈はしない。気持ちのよい音があるし、思い通りに操縦できる楽しさもあるからだ。1.4リッター直列4気筒ターボエンジンは、微妙なアクセルワークに敏感にレスポンスする。ステアリング操作に対する反応も同様。ちょっぴり重めの、でもクルマ好きだったらほどよい手応えだと感じるに違いないステアリングに、軽く力を込めるだけで車線変更は完了してしまう。

このようにパワフル&コンパクトなすばしっこいクルマでありながら、速度が上がるほどにどっしりした安定感を伝えるのがアバルトの面白いところで、このあたりに伝統のシャシーチューニングが活かされているのだろう。

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楽しみだけが増える、それがオープンカーの世界

まだ海は見えないのに、海が近づいていることがわかった。開け放った屋根から入って来た風が、潮風の香りを運んできたからだ。オープンエアドライブは、本当に贅沢だ。音、風、匂いと、ドライブを3倍も盛り上げてくれる。潮風の匂いがだんだん濃厚になり、やがて『595C ツーリズモ』は九十九里の海辺に出た。そこでエンジンを止めて、ひと休み。

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幌を開いた状態の佇まいがサマになる。

トリップコンピューターの数字を見るとまずまずのロングドライブだったのに、疲れは感じない。ボディがしっかりしていることや、KONI製FSDショックアブソーバーなどの足まわりのチューニングがうまいことによって、一般的なコンパクトカーとは快適性のレベルが違うのだ。

海と空をバックに記念撮影をしてから、『595C ツーリズモ』で海辺の街を散策してみる。このクルマはコンパクトなスポーツカーとして遊べるし、もちろんオープンカーとしても楽しめるし、気さくな散歩の友にもなる。一粒で二度おいしいというと何かの宣伝みたいだけれど、一粒で三度おいしいのだ。

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海からの風が少し涼しくなった頃、屋根を開けたまま都心へ戻る。ムーンライトドライブだ。アバルトのオープンモデルといえば、ご存じのように『124 スパイダー』が日本でも発表された。オープンカーの楽しさというのは、乗ってみなくてはわからない。もし気になるという方は、ぜひ一度、ディーラーで試乗なさってみてはいかがだろう。

技術の進歩とは素晴らしいもので、『595C ツーリズモ』にしろ『124 スパイダー』にしろ、昔のオープンカーの弱点だった耐候性や快適性はまったく問題がなくなっている。失うものなしに楽しみだけが増える、オープンカーの世界へようこそ!

ABARTH 595C TURISMO
ABARTH 124 spider
ABARTH 124 spider “S”wordスペシャルコンテンツ

Text:Takeshi Sato
Photo:Masayuki Arakawa