江戸切子作家の堀口徹氏にインタビュー!ABARTHとの“モノづくり”の共通点を探る。

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日本に数ある伝統工芸の中でも、もっとも身近で、もっとも美しいモノのひとつが「江戸切子」だろう。いつまでも眺めていたい宝石のような輝きはもちろん、熟練した職人だけが成せる繊細なカッティングで作られたグラスや食器は、我々の日常をより豊かで味わい深いものに変えてくれる。

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今回SCORPION MAGAZINEは、三代秀石/江戸切子作家の堀口徹氏にインタビューを敢行した。堀口氏は親族でもある『堀口硝子』でガラス工芸の基礎を学び、2008年に『堀口切子』を立ち上げると、ニューヨークやパリでも次々と作品を発表。フランク・ミュラーの特製シャンデリアを手がけたかと思えば、Perfumeのツアー衣装に彼の切子作品をプリントした生地が採用されるなど、ジャンルを超えて江戸切子の世界に革新をもたらしてきた風雲児だ。

「江戸切子は他の伝統工芸に比べると、圧倒的に自由度が高いんです」と語気を強める堀口氏。古き良きものを継承しながらも、新しい価値観を生み出す――といった観点では、ABARTHと江戸切子にはどこか通じる部分があるのかもしれない。今年移転したばかりだという東京都・江戸川区松江の工房『White Base』で行った対話は、結果的に「モノづくり」の本質へと迫る興味深い内容となった。

★三代秀石/江戸切子作家・堀口徹氏インタビュー

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――堀口切子の作品は斬新なカッティングや色使いが特徴的ですが、普段の生活でどんなモノ・コトにインスピレーションを受けるのでしょうか?


色々ですね。建築物の壁のデザインが面白いなって思うこともありますし、何かモノの動きだったり・・・。自分が二車線の首都高を走っていたときなんですが、たまたま4台がこうやって(両手をクロスさせる)同時に車線変更したんですよ。その軌道と言いますか、ラインで切子を作れないかなって漠然と思ったりして。今のところ作ってないんですけど(笑)。

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――やっぱりクルマに乗っているときの方が、自然とアイディアが出てくるものですか。


工房への通勤もクルマですし、運転するのが好きなんですよね。特に遠出が多いわけでもないんですけど、今乗っているクルマも3年で65,000kmくらい走りましたから。逆に電車にはめったに乗らないんで、いざ落ち着いてデザインを考える・・・というときに自分だけのスペースが無いんですよ。この工房だと「何かやらないと」っていう作業モードに入っちゃいますしね。だから結果的には、物事をゆっくり考えられる場所ってクルマの中なのかなって思うんです。

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――ABARTHのデザインなど、第一印象はいかがですか?

実は10年くらい前、原宿でABARTHを見かけたことがあるんですよ。その時はABARTHという名前も知らなかったんですけど、「格好良いクルマがいるなあ」と思ってつい写メを撮りました(笑)。決して大規模な自動車メーカーではないと思うんですけど、逆に小規模だからこそできることってあるんですよね。ガラス工芸でもバカラのように巨大なブランドになると、全世界に供給しなければいけないじゃないですか。でも、ウチの工房はこの規模だからこそ、得意分野で最高のパフォーマンスを発揮できます。ABARTHは車種やラインナップもギュッと絞り込んで、自分たちにしかできないモノづくりにこだわっている。そこはすごく共感しましたね。

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――コンパクトながらもサーキットでも走れるパワーが魅力のクルマでもあります。実際に乗車されてみて、率直な感想を聞かせてください。

僕が普段乗っている日本車はギアが変わった瞬間にさえ気づかないですけど、ABARTHはあえてそういう「走っている感覚」を残していますよね。エンジン音に関しても、最近のクルマはいかに音を出さないかという方向に寄ってますから、逆に新鮮。「運転している」という実感があります。先ほどお見せした「カッティング」の工程では、ダイヤモンドホイールという道具を使っているんですよ。あれのメリットは、上手い人もそうでない人もある程度調整してくれるほど切れ味が良くて、目が細かいことです。それに対して「石かけ」という工程は、すごく力加減が難しくて力量が問われます。これってオートマとマニュアルの違いだったり、デジタルとアナログの違いにも似たところがあって。ABARTHはその両方の魅力を体感できる気がしますね。

151118_YK_00101切子をカットし、磨き上げるダイヤモンドホイール。

――モノづくりの面では、堀口さんの作品はどれも“ストーリー性”を感じさせるのが魅力なのかなと思います。切子にまつわる忘れられないエピソードを教えてもらえませんか。

ストーリーを乗せるようになった理由は2つあって、ひとつは使い手・・・買ってくれるお客さんも、ストーリーがあった方が喜んでくれるんですよね。自分もそうなんですけど、アートとか工芸とかって作り手側には強い思い入れがあったとしても、正直あまり分からないじゃないですか。でも、そこでストーリーとか題名があると、作り手の思っていることがより深く伝わると思うんです。以前は作り手が作品に対して色んなことを語るのって愚かだなって思うときもありました。モノ自体が語ってくれるだろうし、何も語ってないのにそれが伝わるのが理想的ですからね。

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――なるほど。

でも、ある先輩から言われたのが、「伝える」「伝えない」っていうことよりも、「伝わる」ことが重要なんじゃないかと。そこから自分の中で(ストーリーを説明することが)スッと腑に落ちましたね。もちろん、相手が自然と何かを感じ取ってくれたらそれもOKです。作るところまでは自分の想いを色々と乗せてますけど、「その先」は使い手に委ねたい。そうした「余白」というか伸びしろをちゃんと残してあげることによって、より大事にできる。自分が作ったところで「最高点」を迎えてしまうのって良くないんじゃないかなって思うんです。

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――あえて「未完成」ということですよね。日光東照宮の『魔除けの逆柱(さかさばしら)』に込められた「完成された建物は、いずれは崩壊する。正に完成した瞬間から崩壊が始まる」という概念とも通じるのかなと思いました。

ザ・リッツ・カールトン東京にある『ひのきざか』っていうお寿司屋さんの照明をやらせてもらったことがあるんですけど、照明が全部で12本あるんですね。これの6本目だけ実はパターンを変えてあるんですよ!まさに今おっしゃった逆柱の話を以前聞いたことがあって、「それ良いなあ」って思っていて。でも、パッと見では全然分からないですよね。1本だけ異なるパターンがあることで、あのお店がいつまでも繁盛してくれたら良いなあって想いもありますし、従業員の方にその話を伝えたら皆さんすごく喜んでくださって。それで誕生日とか特別な日だってことが事前に分かっているお客様は、こっそりそのお席に通したりしているみたいですよ。そこから新しい会話が生まれることも、ひとつの「完成形」と言えるかもしれませんよね。

――ABARTHにも長い歴史がありますが、江戸切子には180年もの伝統がありますよね。これほど長い間人々に愛されてきた理由はどこにあると思われますか?

自分なりの検証としては、江戸時代から明治、大正、昭和、そして現在と、時代のニーズに合わせて変化を遂げてきたからだと思いますね。その時々に沿った対応力があったし、きちんと提案もできた。シーズンごとにガラリとテーマが変わるファッションに比べると、30年とか100年単位の長いスパンではありますけど、切子も少しずつ表情を変えていることがわかるんですよ。ガラスを使って、その時代の人々を魅了する――それが江戸切子の本質なんだと僕は思います。

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『堀口切子』オフィシャルサイト
>> http://kiriko.biz/

INFORMATION

★SHARE CHRISTMAS 2015
みんなで実現させよう!5つのクリスマス・ドリーム
>> https://www.abarth.jp/share_christmas/

★ABARTH 595 COMPETIZIONE SCORPIOが登場
全国200台限定。特別にコーディネートされたボディカラー&インテリアカラーとESSEESSE BREMBO KITを特別装備。
>> https://www.abarth.jp/abarth595_scorpio/

★ABARTH + YAMAHA
二輪ロードレースの最高峰として位置づけられているMoto GP(モトGP)に参戦しているヤマハチームのオフィシャルパートナー。
>> https://www.abarth.jp/motogp/

★『ABARTH 695 BIPOSTO』の詳細はこちらから
>> https://www.abarth.jp/695biposto/

嶋田智之さんによる『ABARTH 695 BIPOSTO』レポートはこちらから
>> https://www.abarth.jp/scorpion/driving_fun_school/4862

Text:Kohei UENO
Photos:Yosuke KAMIYAMA