嶋田智之さんが語る<ABARTH DRIVING ACADEMY>!初お披露目された『ABARTH 695 Biposto』レポート&吉田由美さんオススメ観戦スポットもご紹介。

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4月29日(金)に富士スピードウェイで行われた、今シーズン最初の<ABARTH DRIVING ACADEMY(アバルト ドライビング アカデミー)>をちょっと覗いてきました。友人の中に去年このアカデミーに参加したABARTHオーナーがいて、その後、彼の隣に乗ったときにドライビングが変わったように感じたことがあったので、どんなスクーリングなのか気になっていたからです。

この日の詳細は別のレポートがあるとのことですから、その辺りについて僕は触れませんけれど、ひとつだけ述べるなら、「なるほど、ヤツのドライビングも変わるわけだな……」とスンナリ納得できちゃうカリキュラムでした。

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例えば初級者コースである“Base(バーゼ)”では正しいドライビングポジションの作り方から始まって、定常円旋回でコーナリング時のクルマの姿勢変化をしっかり身体で感じとる、スラロームでステアリング操作とスロットル操作によってクルマが曲がる姿勢を作っていく練習をする。さらに、講師であるプロドライバーの隣でクルマの持つ限界性能と正確なドライビングをするとクルマはどう動いてくれるのかということを体感する、講師がペースメイカーとして先導するクルマの後を走ってスムーズかつスピーディに走れるラインの取り方を覚える──といった具合に、これらのポイントが上手くできるようにならなければその先のドライビングの上達は望みにくいという部分を徹底して反復練習することができるわけです。

しかも疑問に感じたことはその場で講師に質問して答えを得ることもできるし、自分が上手くできてないところを講師がその理由と対策法まで含めて指摘してくれたりもします。

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サーキット走行経験者のクラスといえる“Tecnico(テクニコ)”や、ほとんど個人レッスンに近い少人数制の“Boot Camp(ブートキャンプ)”も、カリキュラムは少しずつレベルアップする方向で異なっていますが、それぞれとても的確な内容だと思います。

加えて講師の方々が参加者の皆さんに説明するときの言葉が、ありがちな専門用語ばかりを多用する上から目線的なものではなく、一部の専門用語以外では説明しにくいモノを除けば、かなり一般の会話に近いような解りやすいものだったことが印象でした。そういう環境の中で朝から夕方までじっくりと、ドライビングというものを考えたり実践したりしながら学ぶわけです。それはスキルも高くなるでしょう。

アカデミーにて綺麗な動きを習得!

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僕の友人は、それまでもひどい運転というわけではありませんでしたが、コーナーや交差点を曲がるときのステアリングを切るタイミングや戻すタイミング、アクセルやブレーキのペダルを操作するタイミングがかなり的確になり、一般公道をフツーに走っているだけでも判るほど、全体的にクルマがスムーズで綺麗な動きをするようになっていたものでした。

彼は「アカデミーで教えてもらったことを頭に入れて、それを頭に置いて運転するようにしてるよ。飛ばさなくても、タイミングだとかラインだとかは練習できるからね」とその後の努力をアピールしたものでしたが、彼の上達のベースにあるのは間違いなくアカデミーで体験し、学んだことなのです。

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僕は運転が上手くなりたいと思って、若い頃はとにかくたくさん走りました。この仕事についてからは親しくなったレーシングドライバーにちょっとずつ部分的に教えてもらったり、悪い癖のついちゃってる部分を指摘してもらったり、自分なりに考えて工夫してみたりといったことを繰り返し、たいしたものではないしまだまだ伸び代はあるはずだけど、今のレベルまで来るのにいったい何年かかったことやら。でも、こうしたレッスンを受ければ、何年分か、いや、それどころではないくらいの早道。それも、ひとつひとつを正確に教えてくれるプロのレクチャー付きです。僕の若い頃にこうしたアカデミーがあったらよかったのに……なんて、ちょっと羨ましく感じました。

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そして驚いたのは、参加費用がかなり安いことです。ただフリー走行が1時間できるだけで1万5000円とか2時間で2万円とか、そうした走行会に参加することを考えたら、朝から夕方までミッチリ走れてミッチリ教えてもらえて3万円というのは、ほとんど破格といえる料金。いかに70台ほどのアバルトが集まったからといって、採算がとれるものではありません。インポーターであるFCAジャパンの、おそらくこれはユーザーへのサービスの一環なのでしょうね。アバルトのユーザーは幸せ者だなぁ……。

初お披露目となった『ABARTH 695 Biposto』レポート

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この日のショートコースのパドックには、日本初お目見えとなる1台のアバルトがさりげなく展示されていました。2014年の<ジュネーブ・モーターショー>でデビューし、この日本にもおそらく今年中に導入されることになりそうな、『ABARTH 695 Biposto(ビポスト)』です。

このクルマを簡単に説明するとしたら、公道最速の『ABARTH 500』。レース仕様である『ABARTH 695 ASETTO CORSE(アセットコルセ)』を、公道を走ることが許される体裁にしただけ、といっても過言ではないモデルです。

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ビポスト(BIPOSTO=2座席)という名前が示すとおり完全な2シーターとされ、リアシートがあった場所には車体の剛性を高めるための太いバーが張られています。各部が競技車両に近い軽量仕立てとなっているため、車重は1トンを切る997kg。そしてエンジンはレース仕様とほとんど同じスペックといえる190ps/25.5kgm。つまり最新にして最強の『ABARTH 500』、であるわけです。

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実は3月にイタリアのテストコースで、僕は幸運にもこの『ABARTH 695 Biposto』をテストする機会に恵まれました。その痛快さといったら! でも、ここにクドクドと書き記すわけにも行きませんので、興味のある方は本国でのスタンダードな仕様の試乗記を御覧いただくことができますゆえ、もしよろしければ・・・。

ともあれ、このBiposto。自宅から自走でサーキットに向かい、サーキットを気持ちよーく走って、また自走で自宅に戻る──というような使い方に最適。というか、まさしくそのために生み出されたようなマシンです。

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今回のアカデミーに参加されていた皆さんは、当然ながらサーキット走行に対する意識の高いABARTHオーナー。いうまでもなくBipostoに興味津々の方が多く、ディテールをチェックされている方もたくさんおられました。まだインポーターからは日本仕様の具体的な内容や価格などは当然ながら発表されていませんが、その辺りは楽しみに待つことにいたしましょう。

眞貝知志選手の運転によるラリー・マシンを体験!

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そして今回の、ごく個人的なトピックです。昨シーズンから全日本ラリー選手権に参戦しているmCrt(ムゼオ・チンクエチェント・レーシング・チーム)のドライバーとして『ABARTH 500 RALLY R3T(ラリー R3T)』を駆る、眞貝知志選手の助手席を体験することができました。しかもそのときのクルマは、実戦で走らせてるクルマのTカー(予備のクルマ)、つまり実戦仕様にセットアップこそされていませんが、生粋のラリー・マシンそのものです。

セットアップやメインテナンス前の状態ですからさすがに本調子とはいえない状態、エンジンが高回転になるとバラついてしまい、ターボのブーストが効くのはわずか1000回転ぐらいの範囲でしたが、逆にそれだからこそ知ることができたプロフェッショナルの凄さに打ちのめされました。

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眞貝選手はそのブーストがかかっているほんの一瞬の間に、グッと膨らんだパワーを利用してクルマの姿勢を変え、瞬間的にドリフトに持ち込んだりグリップ走行に引き戻したり、自由自在。そのときのアクセル、ブレーキ、シフト、ステアリングのそれぞれの操作は流れるようにスムーズで、結構なスピードでコーナリングしているというのに横Gはフワッと優しく立ち上がって次第にグーッとかかってくるような、見事に角のない綺麗なドライビング。

これはもう名人芸というより特殊技能と呼びたくなるほどで、とてもじゃないけれど僕にはできない領域のものでした。さすがは全日本チャンピオン経験者です。

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眞貝選手は「今どのタイヤにどれくらい荷重が載っているのか、いつもそんなことばっかり考えてますからね」などと秘訣(?)を教えてくれましたが、ここまでのレベルのお話ではないにしても、眞貝選手による公道を速く安全に走るドライビングテクニック講座など、このSCORPION MAGAZINEでお伝えできるようになったらおもしろいかも、なんて考えてしまいました。

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この原稿を書いているのは<全日本ラリー選手権>の第2戦がスタートする直前。開幕戦を見事に優勝で飾った『ABARTH 500 RALLY R3T』ですが、第2戦での再びの勝利を祈りましょう。

ともあれ、こうした講師であるプロドライバーの助手席を体験して新たな発見を得られるのも、このイベントの魅力のひとつです。今年は6月13日(土)に九州はオートポリスで、8月19日(水)に三重県は鈴鹿サーキットで、とあと2回の開催が予定されています。ABARTHユーザーの皆さん、悪いことはいいません。ぜひこの<ABARTH DRIVING ACADEMY>に参加してみてください。目からポロッとウロコが落ちること、一度や二度じゃないと思いますよ。

<スペシャル番外編!?>
吉田由美さんリコメンドする女子にオススメ!
富士スピードウェイのナイスな観戦ポイント

★レストラン『ORIZURU』/レース取材中の気分転換にここは最高

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レースが好きで、見たい大会は仕事にしてまでサーキットに駆け付けるという吉田由美さんが最初に挙げた観戦ポイントは、メインコースのパドックにあるレストラン『ORIZURU』。
「サーキットはアウトドアだから、暑かったり寒かったりするでしょ。気候がちょっと辛いなあというときはレストランでお茶しながらレースを見るのがオススメです。眺めもステキなんですよ。ここからはヘアピンの進入と立ち上がりが一望できます。目線を右に移すと順位を示す電光掲示板も確認できる。レース取材中、私はプレスルームにいることが多いんですが、気分転換したいときはここへ。つい麺類を食べちゃうんですよねぇ」

★グランドスタンド最上段/日焼けを気にせずレースが楽しめます

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もうひとつの観戦ポイントは、パドックの逆サイドに位置するグランドスタンド。しかも最上段。ここを選んだのは女子ならではの理由があるそうだ。
「日焼け、大敵でしょ。サーキットは照り返しもキツいからすぐに焼けちゃう。女子は自己防衛を頑張らなくちゃ。そこで、グランドスタンドの最上段です。ここなら大きな屋根の影に守られるから日焼けの心配なし。見晴らしもいいんですよね。それに1㎞を超えるホームストレートを駆け抜けるクルマの速さや音も楽しめる。この場所、案外ハマっちゃうと思いますよ」

吉田由美さんからの提言「イケメン君を増やして!」

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暑さ寒さ、そして日焼けなど、女子にとってネガな部分をクリアできればレース観戦はもっと楽しくなると語る吉田さん。最後に、レース界に取って置きの提言を。
「どんなスポーツでも応援したくなる選手がいると俄然興味がわきますよね。ゴルフ界なら石川遼くん。フィギュアスケートなら羽生結弦くん。彼らのようなイケメン君が登場すると観客がガラッと変わるでしょ。女子が集まると男子も吸い寄せられる。今のレース界、どの選手も頑張っていますが、イケメン君がいたら大きく変わるんじゃないかしら。スターを育てたいですよね。それは女子すべての願いでもあります!」

INFORMATION

★ABARTH DRIVING ACADEMY @オートポリス
ABARTHオーナー向けスポーツ&セーフティドライビングレッスン。次回オートポリス開催分の応募を絶賛受付中。
受付期間:4/15〜5/23
>> https://www.abarth.jp/drivingprogram/drivingacademy/

★自分だけのサソリをつくれ。
好評のカスタマイズ・プログラムが、牡牛座の期間にも登場。自分だけの595シリーズを手にするチャンスは、もうすぐ終了。
受付期間:4/21〜5/22
>> https://www.abarth.jp/config/

Edit & Text:嶋田智之(番外編Text:田村十七男 TONAO TAMURA)
Photos:横山マサト