第5回アバルト ドライビング ファン スクール@オートポリス

2012年からスタートした“アバルト ドライビング ファン スクール”。アバルトとともに走る楽しさを学び、アバルトを知り尽くすことを目的に、日本各地のサーキットに一流レーシングドライバーを招聘して行われる公式ドライビングスクールである。

ファーストシーズンから大きな話題となり、数多くのアバルト・ドライバーたちにサーキット走行の手ほどきをするとともに、スポーツドライビングの楽しさも伝授してきたこのスクールは、シーズン最終ラウンドとして、12月2日に九州・大分県にある“オートポリス”サーキットを舞台に第5回が開催。
この日もインストラクターの一人として参加者の指導に当たった“マエストロ”檜井保孝選手が、当日のレポートを寄せてくれた。

開会式での挨拶。左から関谷正徳メインインストラクター、福山英朗講師、高木虎之介講師、檜井保孝講師、そして井原慶子講師と、そうそうたるビッグネームがズラリと並ぶ。
 

「この日は、オートポリスの“レイクサイドコース”と言われるミニコースとジムカーナコースを利用して行われました。タイムスケジュールとしては参加受付・車検を済ませたのちに講師および参加者全員が集まって開会式。そして座学と続きます。
この座学は、今回のメインインストラクターである関谷正徳さんからハンドルの持ち方、ドライビングポジションといった基本的な項目を中心に、トヨタの若手ドライバーを育成している関谷さんらしく、基本に忠実ながら目からウロコの素晴らしいお話しを聞かせていただけたと思います。」

今回のレッスン会場となるレイクサイドコースは、開場の直後より冷たい雨。しかも次第に雨脚が強くなり、スクール向けな(?)ヘビーウェットの路面コンディションとなった。

 
「午前の部の後半は、オートポリスらしい広大な駐車場を利用したドライビングレッスン。2つのグループに別れてジムカーナコースとオーバルコースで行います。
ジムカーナコースでは、パイロンで作ったクネクネと曲がったコースを、ハンドルさばきを中心に一般道では決して出来ないスピードでクルマを大きく、でも的確に振り回すことを練習していただきました。最初はゆっくりとしか運転できないのですが、ライン取りを考えて、どこからハンドルを切るか、またどれぐらいハンドルを切るか?それを繰り返し行うことで、参加者の皆さんのスキルがどんどん上達してゆくのが良く分かりました。」

1台ずつコースインするジムカーナ形式レッスンでは、インストラクター陣がそれぞれの愛車とともにチャレンジする受講生たちの走りを、スタートからゴールまで細かくチェック。
ジムカーナコースを走りきったところで、インストラクターからアドバイスを伝授される。受講生たちは走り終えた直後に質問をすることができるので、めきめきと上達してゆく。

 
「その後のオーバルコースでは、直線とコーナーを繋いだだけの簡単なコースで反復練習です。ここではブレーキングやコーナリング、加速といった一番大切な基本を学びます。ここでも多くの参加者さんは、ゆっくりと周り始めます。でも慣れてくるとだんだんスピードに乗ってきます。すると、ハンドルを切っているのにクルマは曲がらない“アンダーステア”という状態を身をもって経験出来るようになってきます。ここでは、どうすればアンダーステアと仲良くなれるか?を学べるのです。クルマも物理の法則からは逃れられません。物理的限界を超える走りはありえません。どうすればアンダーステアの手前で速く走らせることが出来るのか?それを学んでいただきたいのです。
もちろんこんな経験を一般道で試そうとしたら、すぐクラッシュに繋がります。それを安全に楽しく経験して身体で覚えることが出来るのがアバルト ドライビング ファン スクールの趣旨なのです。」

ウェット路面をフルブレーキングでコーナーに入る。通常の公道走行で試すことはかなり危険なシチュエーションだが、「ドライビング ファン スクール」なら安全に体験できる。

 
「ここまでのカリキュラムを概ね理解出来たところでランチの時間となります。この頃になると、もうインストラクターと参加者はすっかり打ち解けてますよね。食事をしながらクルマの動きに関して話し込み、楽しいランチタイムはあっという間に終わりました。」

インストラクターとクルマ談義をしながらのランチタイム。走りに関する質問からアバルトの魅力に至るまで気軽に話せる楽しいひとときに、一同時間の経つのを忘れてしまった。
 

「午後からは、朝のメニューにミニコースでのサーキット走行が加わります。また2グループに別れてサーキット走行組と朝のメニューを極める組で、またまた反復練習です。サーキット走行では元F1ドライバーの高木虎之介選手が“サーキットタクシー”をしながら参加者の皆さんにクルマの限界を“元F1ドライバー”の視点で説明をしてくれました。」

アバルト695トリブート アル ジャポーネ×高木虎之介選手。
模擬レースで最後尾から追走した高木虎之介講師の走りを撮影した動画。コースは完全なヘビーウェットだったが、F1GP仕込みのテクニックを駆使して怒濤の追い上げを見せた。

F1GPをはじめとする世界のフォーミュラで獲得した異次元のドライビングを体感できる高木虎之介選手のサーキットタクシー。憧れの高木選手に、体験後には質問がつきない。
 
「一方のジムカーナは、午後にはタイム計測付きで行われました。走り終わるとタイムを教えてもらいます。そうすると走る度に一喜一憂です!これは大変効果的でした。タイムを刻むにはムダをどこまで省くかです。自分の走りにムダを探して削り取ることでタイムアップしていきます。みなさん楽しみながらどんどん上達して行きますが、楽しい時間はあっという間に終了なんですよ。」
 
「そして最後は、インストラクターみんなで模擬レースです。これは前回もそうだったのですが、けっこう盛り上がります。インストラクターといえども、元はと言えばレーシングドライバー。負けず嫌いが揃ってます。今回のスターティンググリッドは年の順となりました。年齢の高いもの順です。ポールポジションはプント アバルトを駆る福山インストラクター。次に500C檜井。同じく500Cに乗る井原慶子インストラクター、そして最後に虎ノ介インストラクターの順でした。
路面はウェット。アバルトはパワーがあるので、雨路面では大パワーを路面に伝える技術が問われます。雨のレースは抜くのが難しくなります。みんなスタートに賭けています。
関谷競技委員長が旗を振ってスタートですが、全員タイヤがホイールスピン。なんせ雨だし寒いしグリップしません。大なり小なりスタートは皆なミスしてますから、順位は変わりませんでした。アクセルを踏めばホイールスピン。ここからアクセル踏めるっ!てところでアクセル踏んでも、ホイールスピンしまくりです。こんな時はセンターコンソールにある“SPORT”スイッチを押してフロントデフを効かせます。するとホイールスピンは若干抑えられるんですね。それでもホイールスピンしてしまうぐらい路面状況は悪いのですが、福山インストラクターはクルマとの格闘が大変らしくてフラフラ(笑)。福山インストラクターのプントはエッセエッセ・キット組み込み車ですから、ほかのクルマよりもパワーがあります。コーナーでは500Cのバランスの良さで私が追いつきます。でもストレートではプント。しばらく均衡が続きましたが、最終コーナーの立ち上がりで福山インストラクターが大きくフラついた瞬間に勝負がつきました。ココで私がトップに出て優勝したのでした!」

今回も締めくくりは、インストラクター陣による模擬レース。スタート直後の1コーナー、ポールポジションからスタートダッシュを決めた福山講師をアウトから追う檜井講師。
 

「今回は気温が低く、しかも雨という最悪のコンディションでの模擬レース。つまり、タイヤ温度が低い状態からレーシングスピードで走らなければならない。そんなシチュエーションでもみんな全開で走っていられたのは、アバルトの姿勢制御が素晴らしいからです。アバルトの姿勢制御は基本的にリヤを破綻させない。リヤを大きくスライドさせないように設定してあります。これはリヤが大きくスライドすると制御不能に陥り、スピンしてしまうからです。まず、安全が第一。これがアバルトの考えです。電子制御でリヤを安定させておいて、フロントのコントロールをドライバーに委ねる。これがアバルト流のこだわりセットだと思います。だから悪コンディションでもガンガン行けちゃいます!
基本的にハーフスロットルでも良いので、加速状態を作ればびっくりするほど安定した姿勢で加速していきます。僕はアバルトが生き生き走って見えるのはその時だと思います。そしてそのカッコイイこと!“アバルト ドライビング ファン スクール”を受講していただき、みんなが速くて安全なドライビングが出来るようになるためのお手伝いが出来ると良いなと思います。」
 

このように、ファーストシーズンとなる2012年から素晴らしい大団円を迎えた“アバルト ドライビング ファン スクール”は、今年2013年にも日本各地のサーキットを舞台に3回が予定されているとのことである。
さらに福山英朗インストラクターと檜井インストラクターは、今シーズンの“スーパー耐久選手権”に、アバルト695アセット・コルセとともに正式参戦することも決定。2013年のアバルトも、サーキットを最高の友としてフルスロットルで駆け抜けることになるだろう。

受講生とインストラクター陣を交えて記念撮影。参加者全員に映る満面の笑顔が、この日「アバルト ドライビング ファン スクール」を満喫できたことの何よりの証と言えよう。