ETCC1.5時間耐久レースで、ファン スクール受講生たちが大活躍

アバルトとともに走る楽しさを学び、アバルトを知り尽くすことを目的に今シーズンから始まった“アバルト ドライビング ファン スクール”。このユニークなドライビングスクールでは、走りの楽しさを追求したアバルト生来の魅力を充分に引き出せるスキルを確実に身につけ、安全かつ愉しいアバルトライフを満喫していただくことを最大の目的としている。
また、アバルト ドライビング ファン スクールでは、他のワイメイク系ドライビングスクールとは一線を画した特質がある。それは受講者同士がアバルトという最高の媒体を介して、あっという間に良い仲間となってしまうことだろう。
今回は、そんなアバルト独特の気質とファン スクールの成果が、最も魅力的なかたちで体現された一例をご紹介させていただくことにしたい。今年9月17日、鈴鹿サーキットにて開催された“ETCC Endurance Suzuka 1.5h”における、アバルトファンたちの活躍である。

イベントタイトルに掲げられた“ETCC”とは、“ヨーロピアンツーリングカーチャレンジ”のイニシャル。1960年代末から’70年代初頭にかけて、フィアットアバルト1000TCRが最強を誇った“ETC選手権”や、今世紀初頭に現在のアバルトの前身であるNテクノロジー社製アルファロメオ156が活躍した“ETCC選手権(現在ではWTCCに発展)”からインスピレーションを受けたものとされる。
とはいえ、その内容は非常に身近で楽しいもの。総排気量3.41リッター以下の欧州製ツーリングカーを対象とする、いわゆるサンデーレースで「ヨーロッパ車で和気あいあいと楽しめる大人の遊び場」を目指し、新たなステージを全国のサーキットで開催するという。

大会の朝、パドックに集結したアバルト500軍団。たしかに“ドライビング ファン スクール”で見覚えのあるクルマたちばかりだ。隣には盟友フィアット500の姿も見られる。
出走を前にピットレーンにズラリと並んだ第一走“車”たち。ライバルの多くは1.4リッター+ターボのアバルトよりも格段に大排気量で、まさに「相手にとって不足無し」である。


そしてこの日、アバルトドライバーたちがチャレンジしたのは、複数の車両でトランスポンダー(計測器)をリレーしながら走る1時間半の耐久レース。各参加者がそれぞれの愛車で参加できるという、極めてユニークなイベントである。

今回は“Team 500”、“Team 500C”、“Team ABARTH”からなる3チームのアバルトドライバーがエントリー。1チーム3人とそれぞれの愛車が交代で30分の1スティントずつ、計1時間半を走った。つまり今回は9人のアバルト愛好家と9台のアバルト500/500Cがリレーのごとく出走したことになるのだが、驚くべきはそこからである。実はその9人全員が、今年春に開催されたアバルト ドライビング ファン スクール鈴鹿ラウンドの受講生!スクール会場で知り合い意気投合したアバルトファンたちがともに手を携えて、サーキット初心者にとってはなかなかにシビアな耐久レースに挑むことになったのだ。
 

いよいよ1時間半の長丁場のレースがスタート。“Team 500”、“Team 500C”、“Team ABARTH”の3チームに所属するアバルト勢は、素晴らしいスピードを披露する。

レースの戦術を協議する(?)メンバーたち。本格的なサインボードも用意して、真剣な取り組みが見受けられるが、その表情は“ETCC耐久”生来の目的どおり愉しそうだ。
時ならぬ雨に見舞われた中、漆黒のアバルト500がピットレーンに滑り込んでくる。大仕事を終えた仲間に、チームメイトたちからは快走の労をねぎらう様子が見受けられる。

 
かくしてこの日AM10時05分にスタートした夏真っ盛りの耐久レースは、少々不安定な天候にも祟られたようだが、それでも1時間半のリレー耐久レースが終わってみれば“Team 500”の総合2位/TR1000(小排気量)クラス優勝を筆頭に、9人と9台のアバルト軍団は大活躍を収めることができた。
 


[上]ウェットコンディションをものともせず、ピットアウトしてゆく“Team 500C”メンバー。タスキならぬトランスポンダーを仲間から引き継ぎ、30分のスティントが始まった。
 

[右]そして1時間半のレースは“Team 500”の総合2位/TR1000クラス優勝を筆頭に、“Team 500C”がクラス5位、“Team ABARTH”がクラス6位という、素晴らしい結果となった。

 
この活躍ぶりを振り返り“Team 500”のメンバーである河村定人さんは「春のアバルト ドライビング ファン スクールで鈴鹿のコースを走った経験があったから、まずはコースを知っているという安心感は大きかったですね。」と話してくれた。またスポーツ走行歴20年のベテランである“Taem 500C”の日高浩一郎さん曰く、「アバルト ドライビング ファン スクールで自身の愛車の限界が確認できていたので、レースでも安心して楽しむことができました。」とのこと。そしてほかのエントラントたちとも口を揃えて「アバルト ドライビング ファン スクールが無ければ、仲間と知り合ってETCCにチャレンジすることも無かった。」と言うのだ。

 
開祖カルロ・アバルトの時代からサーキットで育まれ、今なおサーキットを本籍地としているアバルト。一方アバルトを愛する現代のファンたちの熱きスピリットもまた、サーキットで昇華される。そんなアバルトの本質に触れるためにも“アバルト ドライビング ファン スクール”がとても有意義なものであることを、3チームに属する9人のアバルトドライバーたちが見事に証明してくれたのである。
 

耐久レース終了後、誇らしさと照れくささとともに表彰式に臨む“Team 500”の3人。小排気量無改造車によるTR1000クラス優勝はもちろんのこと、総合2位は称賛に値する。
“Team 500C”の紅一点“ひめ(匿名希望)”さんは、9月末に開催されたファン スクール富士Rdにも参加。ETCCで得た成果と疑問を、座学会場で熱心に講師に尋ねていた。


9月23日に開催された「関西トリコローレ」に参加した河村さんと日高さん、そして“ひめ”さん。サーキットで育まれたアバルトファンの友情は、あらゆる場でも不変なのだ。